ぶっく
□秋風と共に
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秋風が吹いて、枯葉が宙を舞う。
その光景に、何故か少しだけ寂しさを感じる。
この季節はいつでもこうだ、ロマンチストだのセンチメンタだの、そんなことはどうでも良い。
「寒くなってきたなー」
部活が、甲子園が永遠の終わりを告げ、波から残された俺たちのすることといえば嫌いな勉強。
学校が終わり、放課後哲に勉強を教えてもらう事になった俺は、哲と2人並んで帰っている最中だ。
例え手を繋いでいなくても、恋人らしい事は何ひとつ色気すら無くても、一緒にいれれば幸せなのだ。
「最近はマフラーが手放せねえわ」
「そうだな」
ブレザーに手を突っ込んで、寒い寒い喚けば、哲は少しだけ笑いながら相槌を打ってくれる。
でもな哲、手袋だけでマフラーすら巻いてないお前は尊敬に値するわ本当に。
「なんだ、俺の顔に何か付いているのか?」
「ついてねーよ、見惚れてただけ」
微笑みながら言われてムカつく事にとてもその姿が格好良かったので、茶化すように返す。
俺の言葉に心底驚いた様で、哲は少しだけ目を見開いた。
「純…」
「…なんだよ」
また先ほどの微笑に戻り、俺の頭に手を置いてくる。
手袋越しの哲の体温はじんわり暖かい。
風がまた吹いて、短い哲の髪をすり抜けていく。
「これが巷で話題の『ツンデレ』ってやつだな」
「んなことだろうと思ったよバカ!」
秋風と共に
(寒いなら暖かくなれば良いじゃないか!)
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