金木犀

□生きる
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闇に降りる雨の雫は
針のように
冷たく尖って

温い体で溶けながら
頬をつたい顎でほどける

生まれて来てごめんなさい、と
空に叫んだ

誰かが笑う
闇を見たか?


自分の小ささを
握りしめた手と共に
小さな鼓動に悲哀の音色

まだ何も知っちゃいなかった

まだ誰も知っちゃいなかった


家へと向かう二本の足を鉛のように
重く引きずって

温い記憶を乗せながら
地に足跡を残し続ける


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