短編夢小説 @

□初めて兄さんのマンションへ
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私が真島さんの高層マンションに着いたのは、夜の十時過ぎだった。
黒塗りの車を降りて、幹部会帰りの真島さんと彼の部屋へと向かう。
上昇するガラス張りのエレベーターの中で、初めて真島さんのマンションに来た私は胸の高鳴りがおさまらない。
「美香ちゃん、今日はよう来てくれたなあ」
「うん……」
真島さんが私の肩に手を回して距離を縮める。顔が真っ赤になってないだろうか。
私は、どんどん高まる鼓動を見抜かれないように、みるみる小さくなっていく神室町の夜景に視線を移した。

チンという音がして、エレベーターが目的の階に到着した。
扉が開き、目の前にじゅうたん張りの廊下が現れる。

「真島さん、なんかホテルみたいだよ……」
思わす息を呑む。
「ヒヒッ。そうかも知れんなあ。俺の部屋は一番奥や。行くで」
真島さんは、私の手を引いて、大股で歩き出す。
私は、廊下を歩きながら、ふかふかのじゅうたんの感触を楽しんだ。

三十秒しないうちに部屋の前に着いた。
真島さんは、重厚な木製のドアを開けると、
「早う入り」
と言って、トンと私の背中を優しく押してくれた。

リビングに入ると、私は部屋の豪華さに目を見張った。
二十畳くらいありそうな部屋には、L字型に黒の革張りソファが置かれている。テレビの大きさは六十インチくらいあるんじゃないだろうか。
(真島さん、こんな部屋に一人で住んでたんだぁ……)
ソファに腰を下ろした私は、目を丸くして部屋をぐるりと見渡した。

キッチンから顔を覗かせた真島さんは 「ほれ、これでも飲み」 と言って、コーヒーを私の前に運んできた。
ふわりと香ばしい香りが立ち込める。
「あ、うん……」
ゆっくりとコーヒーカップに口をつけた。真島さんはジャケットを脱ぐと、ソファの上に放り投げ、私の横にドカッと腰を下ろした。
ネクタイを緩めて、シャツのボタンに手をかける真島さんをちらりを見て、鼓動がドキドキと音を立てる。
(もしかしてソファで……?)
緊張のあまり、コーヒーカップを持つ手が震え出したので、テーブルの上に戻す。

「あ?どないしたんや、美香ちゃん。俺が襲い掛かるとでも思うとるやろ?」
「いや、そんな……」
真島さんがヒヒッと笑う。心臓がどきりと跳ねた。
「正解や」
真島さんがニヤリと笑みを浮かべた途端、私はなだれ込むようにソファに押し倒された。

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