般若の素顔と極道の天使@

□2. 再会
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「結構で……あれ!真島のおじさん!?」
「あ…、遥ちゃん……か?」

人形のように整った顔立ちで、陶器のように白い肌の美しい少女が立っている。澤村遥だった。真島が最後に遥に会ったのは、彼女がまだ小学生の時だった。天使のような雰囲気は今と変わっていない。

だが、長い間会っていないうちに、小さかった遥の身長は、真島の肩の高さまで伸びていた。ポニーテールに束ねてある黒髪は、顔の輪郭をはっきりとさせ、遥はぐっと大人びて見える。V字に開いている胸元をチラリと見た。白い胸が見えるようだった。真島は遥の成長に戸惑っていた。

(遥ちゃん、えらいべっぴんさんになったなぁ。桐生ちゃんが遥ちゃんをここまで綺麗にさせたんやろか……?)

「真島のおじさん?」
遥が真島の顔を覗き込む。白い肌に大きな瞳の黒さが目立つ。
「な、何や。遥ちゃんやったんか。久しぶりやなあ」
「うん。久しぶり!最後に会ったのって、私が……小学校三年生の時だよ?」
「そうやったか?大きゅうなったなぁ。なあ、遥ちゃん、今、いくつになったんや?」
「今ねえ、十七歳になったんだよ」
「ほう。なら高校に行っとるんか?」
「うん。今、高三だよ。受験とかあるから大変なの。ところで、真島のおじさん、何しに沖縄に来たの?」
「ち、ちょっと桐生ちゃんにお願いがあって来たんや」
「そっかぁ」

遥は、真島が焦った様子をちらりと見て、それ以上話そうとはしなかった。真島が、遥のエコバッグとトイレットペーパーを掴んだ。
「ほれ、貸してみ。こないなモン、ずっと持っとったらしんどいやろ」
そう言うと、真島は両手にそれを持ち、大股で歩き始めた。

「ありがとう、おじさん。実は、結構、重かったんだぁ」
遥はクスクス笑い、真島のあとを早足で追った。遥を振り返った真島は、ニッと笑うと歩調を合わせた。

十分程歩くと、真島は桐生が営むアサガオに着いた。その施設は、波音が部屋の中まで聞こえるぐらい海に近い木造の平屋だった。
(これが桐生ちゃんが言うとった施設かぁ。桐生ちゃんは堅気になって、こない立派なことしよるんか。ホンマ偉いで……)

真島は、桐生に会えるという期待に胸を膨らませ、ゆっくりと門をくぐる。中庭では子供たちが遊んでいた。男子はキャチボールをし、女子は柴犬と遊んでいた。だが、真島に気づいた途端、子供たちは凍った。

今まで何度かヤクザを見た子どもたちだった。琉球街にあった暴力団の玉城組には、目の前でアサガオを破壊されたことさえある。真島はその組員たちよりも、一層怖く迫力があった。真島は子供たちを見渡した。男子は棒立ちになり、女子は庭の隅に集まり、びくびく怯えている。
その中で正義心が強く体格のいい太一だけが、真島を睨みつけながら、近づいてきた。

「おう、坊主。桐生ちゃんおるか?」
「俺、坊主じゃないよ!太一だよ!」
「おう、スマン、太一」
「おじさん、誰だ?」
その時、遥が会話を遮るように太一の前にやって来た。
「太一、失礼でしょ。この人は、真島のおじさんっていって、おじさんのお兄さんみたいな人なの」
「え?遥お姉ちゃん、そうなのか?ごめん、真島のおじさん」
「ええって。それより桐生ちゃん、どこや?」
「僕がおじさんを呼んできてやるよ!」

太一はそう言い残し、家の中へ走って行った。しばらくすると、アロハシャツに白のパンツをはいた桐生が大股で歩いてきた。

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