暗部〜main〜
□現在〜誘い〜
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もう消えてしまった不忍の里と、コウイチからの手紙を目の前にしながら、アヤトは自分が木ノ葉隠れの里を抜けた時の事を思い出していた。
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「‥は?‥どういう意味?」
アヤトは眉間にシワを寄せ、呆れた様な表情でショウに尋ねた。
二人は里の中でも人通りの少ない場所にある小屋の屋根に座って話していた。
「だから‥オレが里の上役を殺した‥」
ショウが目を伏せながら、しかしはっきりとそう言った。
「‥‥‥」
アヤトは言葉を失った。
は?と言った時の表情のまま、固まってしまった。
確かに最近、仲間であり先輩でもあり最も親しい友でもあるショウの様子がおかしいことには気付いていた。
しかし、いま木ノ葉を恐怖に陥れている事件に関わっているなどとは、流石に想像もしていなかった。
ましては犯人だと‥。
(からかってんのかよ‥?)
「‥い‥いや、ちょ‥タンマ!‥ちゃんと説明してくんないと‥」
アヤトの言葉にショウはゆっくりと頷き、話し始めた。
「‥つまり、任務中に偶然、上役の不正の証拠を見つけちまって、それが上役にバレて逆に自分の命を狙われたってこと?」
「あぁ‥そこを先輩達が助けてくれたんだ」
先輩というのは、その時ショウとスリーマンセルを組んでいた坂下ハヤトと橋本リュウヘイのことであった。
「助けてくれたって‥返り討ちにしたってことでしょ‥?」
アヤトのその言葉にショウが躊躇いがちに頷いた。
「そこから芋づる式に上役の連中の不正の証拠がどんどん見つかった。そして‥先輩達と、木ノ葉の上層部を一掃する機会だ、っていう結論に至ったんだ」
アヤトは黙って話を聞いていた。
「オレも最初は賛成だったんだ‥腐った奴らを掃除できるって。少しは忍の世界も変わるかもって‥でも、やっぱ‥何か違う気がして‥」
「先輩達も、段々と変わってきて‥不正なんかしていない上役の暗殺まで計画し始めて、自分達がトップに立とうとし始めたんだ。オレが止めてももう手遅れで‥何を言っても、耳を貸してくれない」
ショウは悔しそうに拳を握りしめた。
「それでも、二人はオレの仲間だ。オレの命を助けてくれた恩人だ‥だから二人がこれ以上手を汚すのを見ていられない」
「‥じゃあ、三代目に報告でもするしか‥‥」
アヤトがそう提案すると、ショウは首を振った。
「無理なんだ‥先輩達だって馬鹿じゃない。三代目や暗部の動きには、これでもかって位に目を光らせてる。迂闊には動けない‥」
「‥‥‥‥」
アヤトが口を開こうとした、その時だった。
「!」
二人は人の気配に気が付いた。
辺りに集中する。
「‥‥‥!」
そこには酔ってフラついた男がいただけだった。
それを見て二人は警戒を解く。
「今日はこれくらいにしよう。話、聞いてくれてサンキューな‥アヤト」
「‥いや‥構わないけど‥。何か手を考えなきゃね」
「あぁ‥悪いな‥迷惑かけちまって‥」
「なに言ってんの、別に迷惑だなんて思ってないよ」
「‥‥ありがとな」
そう言って、二人は一旦別れた。
(ショウ‥かなり精神的にきてるな‥)
アヤトはショウの様子を思い出して、不安を覚えた。
ショウを救うためにも、頭をフル回転させて対策を考え始めた。