暗部〜main〜
□疾風伝〜覚悟〜
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木ノ葉隠れの里は第四次忍界大戦の準備に追われていた。
カカシは準備の合間を縫って、アヤトが投獄されている地下牢へと向かった。
薄暗い階段を降りたところにそれはあった。
ここに来るのは今回で四度目だ。
「アヤト」
カカシは鉄格子の外から呼びかけた。
呼びかけられた本人は、見るからに硬そうなベッドの上で壁の方を向いて寝転んでいた。
「‥‥‥」
こちらへ振り返る気配はない。
(‥やっぱダメか)
カカシは横たわる背中を見つめた。
以前来たときも、そのまた前に来たときも、アヤトがカカシを振り返ることはなかった。
「また来る」
カカシはそうとだけ言い残し、準備に戻った。
このままではいけない。
それは十分理解していたが、カカシもアヤトも前に進めずにいた。
---火影室
綱手が机の上で手を組み、険しい表情で黙っていた。
その様子をシズネが心配そうに見つめる。
「綱手様‥偵察部隊や他国からの情報では相手はかなりの戦力を有しています。戦力は少しでも多いに越したことはありません。立花アヤトが暁のスパイであったという話が事実ならば、戦争に参加させるべきです」
奈良シカクがはっきりと言った。
「わかっている。だがアイツはその事実を認めようとしない。白か黒かはっきりとしないような奴を戦争に参加させる訳にはいかない。第一、アイツが従うとは思えんし、他の影たちも黙ってはいないだろう」
「それは承知しています。ですがそうも言ってはいられません。オレは仲間の死体を跨ぎたくはありませんから」
シカクの言い回しを聞き、綱手はシカクを睨みつける。
それに怯む様子もなくシカクは続けた。
「アイツの力は強大です。その力を上層部や他の影たちに見せることができれば、アイツを使う気にもなるでしょう」
「本気で言ってるのか?‥この戦争準備でごった返しているときにそんなことを‥」
「だからこそです。これも戦争の準備です」
シカクの強い視線を受け、綱手は深いため息をついた。
「お前がそこまで言うのなら‥わかった、すぐに会談を開くぞ」