日常〜疾風伝〜

□職権汎用
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「はぁ‥カカシくんめ‥」

アヤトは書類に目を通しながら歩き、つぶやいた。

任務の内容は要人警護。
要人警護と言っても今回の場合は少しニュアンスが違う。
警護対象は、親睦を深めるために木ノ葉を訪れている隣国の大名の娘。
要は父親の仕事が終わるまで世話をしろということだ。

庄司カオル。18歳の女だ。
書類には写真が添付されていた。
いかにもお洒落と男にしか興味がない、と言ったような出で立ちだった。

アヤトはため息をつきながら書類に書かれている宿へと向かう。
豪華な建物の中へ入ると、一人の中年の男性が出てきた。

「お待ちしておりました。私は庄司家の使いの者です。カオル様はこちらです」

アヤトは軽く挨拶をし、男の後に続いた。
いかにもVIP向けといった部屋の前で立ち止まる。

「こちらです。それでは今日一日、よろしくお願い致します」

そう言って男性は去っていった。

「はあ……」

アヤトは小さくため息をつき、ドアをノックした。

「失礼します。今日一日警護を担当させて頂きます、立花アヤトです」

少しの間のあと、ドアの向こうから声がした。

「入って」

その言葉にドアを開ける。
部屋の中は想像通りの豪華なものだった。

「失礼します」

「随分と遅いのね」

赤みがかった長髪の若い女性が苛立ったように言った。

「申し訳ありません」

「まあいいわ。そんなことより、最初に言っておきたいことがあるの」

「なんでしょうか」

「私の言うことには絶対に従ってちょうだい。逆らうことは許さないわ」

「………」

(流石、大名の娘…好き放題ってか)

アヤトは気持ちを押し込め微笑んで答えた。

「分かりました」

「じゃあ早速一つ目の指示」

「はい」

「敬語は止めて私のことは呼び捨てにすること」

「え…!それは‥‥」

「何?」

「それは流石に出来ません」

「逆らうなって命令忘れたの?あなたたち忍は命令が絶対なんでしょ?」

「それは…そうですが…」

「あぁ、もう!…これは命令なんだから余計な事考えないで従えばいいのよ!」

カオルは苛立ったように立ち上がり、アヤトへ詰め寄る。

「は、はい‥」

気圧されたアヤトは曖昧に返した。
カオルはその言葉に満足そうに頷くと身支度を整え始めた。

「じゃあ里を案内してちょうだい!木ノ葉は観光地がたくさんあるでしょ!」

上機嫌なカオルを見つめてアヤトは漏れそうになるため息を押し込めた。
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