日常〜疾風伝〜

□創替花
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ある日の夜。
賑わう木ノ葉の繁華街にて。

「ミサキ、まだ帰らなくていいの?…アヤト君怒るんじゃない?」

「いーの。今日は任務で帰ってこないから」

「あ〜忙しそうだもんね。六代目と親しいし色々と頼まれちゃうのかもよ」

「どうなんだろうね、任務のこと話さないから」

ミサキは親しい同期3人と飲みに出ていた。
年頃ということもあり、もっぱら話題は恋愛事。

「メグはどうなのよ?」

「……それがね…結婚することになったの!」

突然の報告に女性陣から歓声が上がる。

(…いいなぁ)

ミサキはぼうっと幸せそうな友人を見つめていた。

---

「結婚?」

翌日、ミサキは紅の家を訪ねていた。
アスマは任務に出ている。
娘のミライは隣の部屋で昼寝をしていた。

「なに、結婚したいの?」

紅が紅茶を飲みながら尋ねた。

「したいって言うか…周りの友達がし始めてるし、そろそろ考え始めるというか…」

「あーもう23歳だものね」

「はい…」

「アヤトはどうなのよ?そういう話しないの?」

「まったく…。私が子どもは2人欲しいなとか言っても、へーって感じで…」

「言いそうねアイツなら」

「はぁ…どう思ってるのかな…」

「直接聞いてみたらいいじゃないの」

「うーーーん」

「なんならアスマにでも探り入れさせてみる?」

「そんな!…いいですよ、自分で聞いてみます」

「そう?何かあったら力になるからね」

紅の言葉に強く頷きミサキは家を出た。

---その日の夜

「ただいまー」

アヤトが任務から帰ってきた。
その日はアヤトがミサキの家へと泊まりに来る日だった。

「おかえり。お風呂準備できてるよ」

「おーありがと。入ってくるわ」

アヤトを見送り夕飯の準備を進める。

(今度こそはっきりさせなきゃ)

ミサキは自分に言い聞かせた。
やがて髪の毛をふきながらアヤトが風呂から出てきた。

テーブルの夕飯を見ながら微笑んだ。

「うまそ…腹減った」

「じゃあ早く食べよう」

2人でテーブルにつく。
やがてミサキが切り出した。

「友達がね、結婚するんだって」

「誰?」

「メグとカズヤ君だよ。覚えてない?」

「うーん…カズヤは覚えてるかも」

「もう私たちもそんな歳になったんだね」

「そーだな」

そこで終わってしまう会話。
いつもはこのあたりで引き下がっていたが今回は違う。
思い切って聞いてみた。

「アヤトは結婚ってどう思ってるの?」

「どうって…別に…」

「じゃあ子どもが欲しいな、とかは?」

「…思わないかな」

「っ!……どう…して?」

「うーん…血継限界とかさ…重いものは背負わせたくないし…大体オレが父親になれるとも思えねーや」

アヤトは小さく笑いながらご飯を頬張る。

「…………そっか…」

そこでやっとミサキの様子に気付いたアヤトは焦ったように言った。

「あ、いや!…ミサキは子ども欲しいんだもんな…ならやっぱ他にいい奴見つけた方が…」

「…え?」

その言葉にミサキが視線を鋭くする。
その視線に気付かずに続けるアヤト。

「ほら…オレといてもそういう幸せは掴めないだろ?…だったらオレは引き下がるから、気にしないで他にいい奴を…」

「他の男と作れって?」

「!」

一気に張り詰める空気にアヤトが冷や汗を流す。

(地雷踏んだ…?)

アヤトが考えを巡らせているとミサキが言った。

「オレは子ども作る気ないから欲しいなら他に行けってことね。2人で話し合う必要もないって。だから結婚にも興味ないってこと」

「…ミ、ミサキ?」

「わたしはそんな簡単に切り離せる女だったってことでしょ?」

「そういうつもりじゃ…」

「…そういうことじゃない!」

「…………」

焦ったようにミサキを見るアヤトへ言い放つ。

「悪いけど出てって。少しひとりで考えたいから」

「…………わかった…」

何かを言いかけたアヤトだったが、素直に頷いた。

「……」

無言でうつむくミサキ。
アヤトはその背中を見つめると静かに家を出た。
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