短編
□いきたい
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『夜、いつも怖いんだ』
今日も真っ白な空間に包まれた彼女は、今にも消えそうな声で呟く。
『朝、起きてね、いつも安心するんだ』
細くて白い四肢は彼女の弱々しさの象徴かもしれない。
『綱吉はひどいね』
そんな彼女はいつも言う。
『こんな私に“生きたい”と思わせる。極悪人だ』
そして彼女はいつも泣く。
感情的になるのはあまり良くないと言われているのに。
「…ごめん、好きだよ」
『せめてさ、…っもうちょっと早く言って欲しかったよ』
医者からもう手の施しようがないと言われ、自らの意思で人工呼吸器を外し、延命目的の薬物療法も断った彼女に残るは死への道。
親も兄弟も事故で失った彼女は、生き続けることを諦めたはずだった。
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