審神者の日常
□姫抱
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ドタドタと急ぎ足でこちらへと近づく足音が聞こえる。
「っ…ぬしさま!」
勢いよく襖が開き息を切らした小狐丸が飛び込んでくる。
「どうした?」
「どうしたもこうしたも…ぬしさまがお怪我をされたと聞いて…。」
不安気に私を見下ろす小狐丸。
「怪我っていってもそこまで大したことでも…」
「大したことある。」
私の足に包帯を巻いてくれている薬研が溜息をつきながら私の言葉を遮った。
強く巻かれた包帯で傷が圧迫されズキズキと痛む。
鍛刀をして、後片付けをしている時に失敗して折れてしまった刃を踏んでしまい、足の裏をザックリと切ってしまった。
「大将がこう言ってるだけだ。本来なら俺なんかじゃなく現世の医者に診てもらうべきなんだ。」
「ならば、直様私がお連れします。」
包帯を解けないようキュッと固定している薬研を見て呑気に器用だな、などと考える。
「いや、そこまでしなくても大丈夫。」
「はぁ…大将はこう言って聞かねぇし…。」
腕を組み悩んでいる様子の薬研。
私のせいでここまで悩ませてしまって申し訳ないとは思うのだが…。
「よし、それなら、傷がある程度塞がるまでは歩くのはダメだ。」
「歩けないのか…仕方ないことなのだろうが。」
「傷が塞がるまで、とは一体如何程なのですか?」
そう問われた薬研は綺麗に包帯が巻かれた私の足を見る。
「そうだな…良くて1週間ぐらいか。」
「1週間も歩けないのか…?」
「場所が場所だからな。仕方ねぇよ。」
確かに足の裏を切ってしまったのだし歩けないのは分かるが…。
私の仕事はどうすればいいだろうか。
「さて、大将には悪いが俺は遠征に行かなくちゃならねぇ。」
「あぁ、手当てありがとう、助かった。行ってらっしゃい。」
私が、救急箱を片手に持って去ろうとする薬研の後ろ姿に呼びかけると、薬研は一度だけ振り返ってニッと笑った。
「ぬしさま、本当に大丈夫なのですか…?」
襖が閉められると心配そうに私に声を掛ける小狐丸。
「怪我自体は大丈夫だ。今はそんなに痛まないし。ただ、足が使えないとなると色々と不便だと思ってな。」
「ならば」
私の前に跪き、私を見つめる小狐丸。
「この小狐丸めが、ぬしさまの足となりましょう。」