短編

□ 切 
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 「薬研。馬鹿な真似は止しなさい」

 「一兄ならわかってくれると思っていたんだがな」


'' 藤四郎吉光の短刀は、切れ味は抜群だが主人の腹は切らない ''
と、言い伝えられていた。
大将の腹は切れない。
...もし大将がそう望んでも。
そう心に決めていた。


1573年、俺は織田信長の元へ献上された。
それからというもの、俺は織田信長の愛刀とされ、常に彼の傍にいた。


1615年。
別れは突然だった。
本能寺の変、それが俺の最後だった。




はずだった。
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