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□世話好きな先輩の話
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ドクドク、ドクドクと

心の奥底から、とめどなく溢れてくるこの感情は一体何なんだろう








「翔ちゃん」

君に名前を呼ばれると、なんだかくすぐったいような、でもどこかあったかいような、そんな気持ちになるんだ


「もう!翔ちゃんまた教科書忘れたの?しょうがないなあ…今日だけだからね!次はないんだからね!」

そういいながら、結局いつもおれを助けてくれる優しい君

「翔ちゃん、大丈夫?ムチャしたらだめだよ!ケガして翔ちゃんの大好きなバレー、できなくなったらやだよ…ほら、消毒しよ、脚みせて」

よくケガをするおれを本気で心配して、すぐに傍に来て手当をしてくれる君

「みてみて翔ちゃん!タンポポだよ!もうすっかり春なんだねぇ」

道端に咲いている何気ない花にも、君はよくきがついて、見つけては嬉しそうに教えてくれる
その笑った声が表情が、おれは何よりも大好きで

怒った顔も、心配そうな顔も、笑顔も

全部、全部

頭から離れないんだ









「…最近妙に練習中のミスが多いと思ったら…」

日向の話を聞いていた菅原は、額に手を当て、小さくため息をついた

というのも、数日前から練習中に日向がぼーっとすることが増え、ミスが多発し、しまいには堪忍袋の緒が切れた影山が後頭部サーブをくらったときの如く無言の圧力をかけ始めたため、(またその光景をみて黒いオーラを量産し始めた大地の爆発を防ぐため)、先輩を代表し、菅原が日向の話を聞くと、日向はその原因について思い当たるところを素直に洗いざらいぶちまけ、その内容に呆れるもとい頭がクラクラしてきたためである

日向の話は、我らがバレー部のマネージャーであり、日向の幼馴染である女の子に対することであり、簡単にいうと最近その子のことばかり考えてバレーに集中できませんおれ病気でしょうか助けてください!というものであった

(しかも、ここまでいっといて本人はまったくの自覚なし…!!)

そう、ここまであつい思いを語っておきながら、日向は自分の感情の正体を理解していない

そこに菅原が頭をかかえる原因があるとは露知らず、日向は先ほどから落ち込んだ様子で菅原の前にじっとしていた

その時、菅原は背後から足音が聞こえるのに気がついた
落ち込んでシュンとなっている日向はきがついていないようだが、今二人のいる部室は、上がってくるまでにある階段があり、老朽化のせいか、のぼるときにどうしても音がたってしまうのだ。今は部室の扉も開け放しているので、尚の事その音は顕著に耳に入ってくる

おそらく、あの子がなかなか戻ってこない二人を心配してやってきたのだろう。彼女は元々献身的な性格だし、日向のことになるとなおさらだ

(しょうがない、ここはいっちょ先輩が力を貸してあげますか)

心の中でもう一度ため息をつきながらも、菅原は俯いている日向の頭に、優しく手を置くと、改めて口を開いた

「…日向、それはさ」

こちらを見上げた日向に、菅原はニカッと笑いかける

「恋、だべ?」

「…こ、い?」

始めは目を丸くし、キョトンとしていた日向だが

「…そっか。おれ、名前のことが好きだったんだ」

そういった日向の表情は、どこか納得のった様子で

菅原がほっとしたのも束の間、聞こえていた足音がピタリととまる

ガシャアアアアアン

今まで静かだった部室に大きな音が響いて、二人が扉の方を振り返るとそこには呆然とした名字が立ち尽くし、こちらを凝視していた

「え、あ、名前…!?」

対する日向もしばし固まっていたが、状況理解に頭が追いついてきたのか、顔がみるみると真っ赤になっていく

それを見た名前も、人間ってこんなに赤くなれるのかーと菅原がどこか的外れな感情を抱くほどにゆでダコ状態になり、落とした洗濯物カゴをそのままに、顔を両手で隠して走り去ってしまった

「…ほぉら、日向!」

「ふえっ!?」

後輩たちの反応に苦笑しつつ、菅原は日向の背を勢いよく叩くと、人差し指をたてて言った

「好きな子に自分の気持ち、ちゃんと伝えなくていいのかよ!早く追いかけるべ!」

「…はい!スガさん、おれ行ってきます!!」

先輩の言葉に気を持ち直すと、日向は持ち前の瞬足で彼女の追いつくべく、走り出した







「名前ー!!好きだぁぁぁ!!」

「翔ちゃんあのね!!私も大好きだよぉぉぉ!!」




洗濯物が散らばってしまった部室に、後輩たちの大きな声が聞こえてくる

たぶんこの声は、仲間たちが部活をしている体育館にも届いていることだろう

「あーあ、まったく…明日みんなにからかわれれるぞー」

さて、大地にはどう説明しようか

頭の隅で後輩へのフォロー考えながら、世話好きな先輩も、二人の行方を見守る為に部室を後にするのであった









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

日向「あのあと全力で抱きついた、菅原さんに」
影山「ボゲ日向ボゲェ」

日向は恋愛ごとに対してうとくて初心で、でも自覚したらそっからはストレート、真っ向勝負なんじゃないかなあと思ってかいた文
しかしこれ、恋する少女日向と、その相談に乗ってあげる女子力高い先輩菅原の図に見えなくもな…いえ何でもありませんごめんなさい石は勘弁してください!!



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