自転車BOOK

□東堂の願望
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「…え?お前それを買うためだけにそんな楽しみだったわけェ…?」


レジにうきうきしながらそれを買う東堂は本当に楽しそうで…


楽しげなまま東堂と荒北はコンビニをでていき、寮へと帰る道を歩いていった。


「ふむ!やはりこれはおいしいな!!」


「あ、その、ベプシあんがとネェ


…にしても東堂…なんで肉まん一つでそんな楽しめんノォ…?」


東堂の右手に持っていたそれ―――肉まんはほかほかでとてもおいしそうである。


そのおいしそうな肉まんをよりいっそうおいしそうに頬張る東堂に荒北は心配することしかできなかった。


「こういうことならなおさら新開か、それよりもお前なら福ちゃんといきそうだけどォ?」


「すまんな、荒北。」


東堂が荒北に向かって謝っているのは、まれな話である。


そんなまれな姿をみた荒北はふっと笑った。


「まっ、気分転換にもなったしベプシもおごってもらったし、終わりよければすべて良しってか。」


東堂はそんな荒北をみて、苦笑いで返した。


「すまん荒北、俺は荒北の気分転換を利用してしまった…」


そんな言葉を聞いた荒北は、東堂の顔をじっと見つめた。


「実はな、俺はこうやって肉まんを食べたかったのだ。」


「あ?お前肉まんそんなに好きだったのォ?んじゃぁ誕生日にでも買ってやるよ。」





「た、単に好きという訳ではないのだ!


こうやって部活帰りに寄り道していって、コンビニで肉まんを買ってふざけ合いながら帰って、


ほら、俺たち寮生活してるだろう?


だから部活の帰りっていっても校舎内だからな、味が出ないのだ。


俺はな、一回こうやって青春を堪能したいのだと思っていたのだ...」


「…へぇ、東堂にもそんな夢があったワケね。」


俺にこうやって打ち明けてくれるとは思わなかったけど。


そんなことを思いながら荒北はまだ肉まんをほおばっている東堂をみた。


「……」








ガブッ


「んなーーーーーーー!?!?荒北!?お前っ、俺の肉まんを…!!」


「ッハ、てめぇがちんたらちんたら食ってっからダヨ!」


「な、なんだと!こんの、タケノコ!!」


「あぁ!?んだと!?このデコカチューシャ!!」


「よ、よくも…また侮辱しおって………フフ……ハハハッ!」


「てんめぇ…笑ってんじゃ、クククッ、」


東堂と荒北は二人で笑い続けた。


それもあのよく喧嘩していた二人が一緒に。


はたから見れば、とても仲のよい男子高校生が二人して笑い合っているかのように。






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