自転車BOOK

□東堂の願望
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「ッハ〜、笑った笑ったァ!」


「こんなに笑うのは久々だな!」


二人は笑い終わると、再び顔を見合わせ歩き出した。


静かな夜、二人は会話はしなかったものの、東堂のいう青春というものを楽しんでいた。


すると、また突然東堂が荒北にむかって話し始める。




「荒北、俺な、実はお前のことが好きなんだ。」


「何いってんダヨ、頭までわいたのか。」


荒北は笑って返すが、東堂は少し困った顔をしている。


そんな東堂に荒北は冷や汗をかきはじめる。


「え?どうしたノ、東堂。なにいってんの?」


「やはり冗談に聞こえてしまうな。もう一度、面とむかって言いたいところだが荒北も混乱しているだろう。」







寮をでた時よりは暗いこの道は、先ほどの大きな笑い声とは違い静まり返っている。


さきほどとは同じ静けさなのだが、楽しい空気からいっぺん、冷たい空気へと変わっていった。



この空気に飲まれそうだ…



そんなことを思いながら荒北は東堂のほうをじっと見つめるだけである。


「俺のこの肉まんを食べるという行為を成し遂げるためには、お前が横にいなければならんのだ、荒北。」


「…どういうことだよ。」


「肉まんを食べて楽しく帰ることも俺のしたかったことの一つだが、


俺の好きな子と一緒に帰って、一緒にふざけて、一緒に笑いあって、


そして、帰り道で告白して…


そんなことができればな、と思っていた。


だが、今俺の目標は達成できた!!


ありがとう!荒北!!


とても楽しかったぞ!!」


東堂がみせるその笑顔はとても輝いており、


荒北にはまぶしすぎるほどの笑顔であった。


「俺の恥ずかしい青春体験は終わりだ!


さぁ、ともに帰るぞ!荒北!」


まぶしすぎて、


その笑顔が太陽のようで、


なにもかも、俺の心臓までも


溶かしてしまうような




「おいッ!ま、まてって!おい!」







あぁ、青春ってなんて。


なんて青臭くてきれいで残酷なんだろう。






     
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