自転車BOOK

□ある荒北さんのおはなし
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新開ってどんだけ俺のこと好きなんだろう。


そんなことを考えてたわけで。


だって、昨日いきなりあんなことを言い出すもんだから。




「靖友のことが、好きなんだよね。


なんかわかんないんだけどさ。」




当然びびるよな。


いきなりそんなこと言うから。


俺、頑張って黙ってきたんだけどな。


ビビった次には、俺と同じ気持ちかよって思った。


ちょっとほっとした。


俺がお前との関係を崩したくなくてずっと言わなかった二文字を


お前は言っちゃうんだもんな。


お前も俺とおんなじだったんだろ。


手ぇ震えてたんだから、勇気出していったんだろうな。


俺はそれをわかって言ったよな。




「え、まじで?キメェんだけどォ?


っつかそういうの、俺ムリだわ。」




最低。


ひっでぇ言葉。


その時の新開の顔って言ったら、もう。


見てらんなかったな。


でもな、


その後なんだよ。問題は。


なんで怒ったりしねぇんだよ、なんで泣いたりしねぇんだよって


正直思った。


つかそっちの方が俺も気持ちがよかった。


なんでいつも通りの顔してんだよって。


そう言いたかったけど、その前に俺がひでぇこと言ったから言えなくてさ。


そうか、すまねぇなって言って終わりとか、


お前の気持ち、俺の二言で終わったんだぞ?


あんなに声震えていってたのによ。


そんなもんだったのか、ってな。


俺がそんなこと言える義理じゃねぇけど。


俺はお前より何倍もお前のこと好きなんだよ。


お前と一緒だったら気持ちがふわふわするし。


だからこそ、ってやつなんかな。


まぁ結論言えば、変わるのがこえぇんだよね。


もう今のままで十分。


逆に今、俺らが付き合ったらどうなる?


俺が苦しむだけだろ。


ハッ、俺ってすげぇ自己中。


チャリ部も引退したばっかで、これからが俺にとっては本番だってのに。


俺は勉強して早く大学に合格してぇんだよ。


合格してさ、


ようやく死ぬんだよ。


やりたいことやったら、もう病院にいかなくてもいいし、


薬ももらわなくていいし。


大学合格っていうやりたいこと成し遂げてぇんだよ。


命に制限がつくって怖いもんだけどさ、


まぁバカやったし、


楽しかったからいいかなって。


だから、俺の新開に対する気持ちも、


新開が俺に思っているその気持ちも、


あっけなく終わればいいんだよ。


ごめんな、新開。


こんな俺のことは忘れてさ、


もっとお前に似合う女と付き合えよ。


そっちのが幸せだって。

















あぁ、


そうだなぁ。


そういえばさ、


新開ってどんだけ俺のこと本当に好きだったんだろう。


































新開さんのことが忘れられない病気な荒北さんのおはなし

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