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□ある日の金城さんと荒北さんのおはなし
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正直一人暮らしにはもう慣れた。


家事もそこそこできるほうだと思うし、


まぁ米はうまく炊けないけど。


そんでもともと俺さ、一人が寂しいとか思わないほうなんだよネ。


だから、俺にとって一人暮らしはそんなに苦ではなかった。


でも、ときどき急にあいつがアポなしで家にやってくることがあるんだ。


もうすっげェ迷惑。


だからいちいちドア開けるのもめんどくさいから、


合鍵までつくってあいつに渡したんだ。


そしたらよ、俺が大学で疲れたって時に家に帰ったら


あいつが家からひょこっと顔出すわけ。


心臓とまるんじゃねェかって思ったヨ。


そりゃ誰だってびっくりするだろ。


合鍵を渡したとはいえ、誰もいないって思ってた家から顔出すんだぞ。


一種のホラーかよ。


でもさ、


びっくりはするんだけど、


それと同時に「あぁ、俺って幸せなんだな」って思ってさ。


そんなこと思う俺もあの大食い野郎と同じバカなんだろうな。


でも、この幸せが続けばいいなって、


こんな些細なことでも、大切にしていけたらなって、


そう思うんだヨ。


あ?付き合ってんのかって?


んなわけねェだろ、金城。


でも片思いなんじゃねェのかな、俺の。


でも告白とかはしねェよ?


俺の場合、付き合いたいから告白とかじゃなくて、


んー、なんつーんだろ。


幸せだったら、それだけでいいかな。


つーか、お前ニヤけてんじゃねェヨ。


ぜってーいうなよ!?ぜってーこのことあいつにいうなよ!?


俺もあいつにぜってーいえねェし、いわねェからな!!











んー…


両思いだと思うんだが…


こうなると逆に厄介だな。


新開が荒北のことを普通の目で見ていないことは誰でもわかるのに、


当の本人たちはそれに気づいていないという…


…新開もまた災難だな。




















ある日の金城さんと荒北さんのおはなし。
   

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