自転車BOOK
□気付かせたもん勝ち
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「今泉くん…だっけ?」
歩いている今泉を止めた人物は、ダメ4番と呼ばれていた男―――新開隼人だった。
「どうも、新開さん。」
「いやぁ、どうしたんだい。こんなところに来て。まさか箱学の偵察をしに来たのかい?」
「そうですね。ちょっと今どうなってるのか心配で。
でも、大丈夫そうでしたのでよかったです。」
「そうかそうか。でもまだまだ偵察しに来てもいいんだぜ?」
そういった途端に、空気、風、そのものが変わったのを今泉は感じとった。
「知ってるかい、今泉くん?人のモンはいくら見てたって奪えねぇもんは奪えねぇってことをさ?」
「奪う気はありません。だってもうあの人はもうすぐ俺のになりますし。」
「そう言いてぇからあんな光景を俺に見せたんだな…?」
「さぁ…それはどうでしょうか。でも今は俺のことを見てくれてるって相手にも伝わったので今日は退散します。
では、失礼します。」
何事もなかったかのような顔で歩いている今泉を、新開はじっと見送った。
そして今、二人の脳にはある人物しかいなかった。
―――――――ぜってぇまけねぇ
二人は、一つの決意をかかげた。
そのある人物が、誰かのせいで自転車の練習に身が入っていないということも知らずに。