自転車BOOK

□俺の好きな人は
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密室。


二人きりの空間。


好きな人の部屋。


そして、いま目の前に好きな人。


………なんだ、この好条件は。


「おいしょ」


なにそれ、なにその野獣と思えない掛け声はなんだよかわいいな。


俺も靖友のベッドに座りたい。


「その、靖友、勉強は頑張ってるか?夜食持ってきたぞ」


「おめーは父ちゃんかヨ。んでその夜食、すげぇお前好みのスイーツとかじゃん」


「俺も一緒に食べたいなー、なんてな」


「ったく、この甘チャンがぁ……おら、食べんぞ」


「……おう!!」


やっぱり優しいなぁ、靖友は。


靖友と食べるお菓子も格別うまいなぁ。





あ、


それもそうだけど!!!!!!


今日はそんなことをしに来たんじゃなくて、


大事なこと言いに来たんだそうだ忘れるな隼人!


「てめぇこんなことしに来たんじゃねぇんだろ


さっさと言えよめんどくせぇ」


まったくその通りでございます。


「え!そ、それは、その、」


「チッ、夜食あんがとね」


あ!靖友が…勉強に戻っちまう……!


あぁぁ……座っちまってもう俺の顔見てねぇよ……


でもまだいう勇気が…


ええい!もう!!!


どうにでもなれ!!!


「靖友!聞いてほしいことがあるんだ!!」


「へいへい、何?パワーバー、新発売の味がでたとかだろ?」


「うん!


あ、ちがう!


いやそうだけどちがうぜ!


その、俺、実は


すすすすす


好きな子ができたんだ!!」


あーもー俺何いってんだ……


「え、なんだよ。誰かに告って俺におめでとうって言って欲しいわけェ?」


「ちがうんだ……その、聞いてくれ


俺、初恋で、そんでその子のこととにかく好きでな…


いつも俺の事、見てくれて、


俺がアポなしでその子の部屋にいってもすぐ入れてくれるし、


俺よりがっしりはしてないけど筋肉はあってさ、


でもその細い手とか見てると、あぁこんな小さな手でみんなを支えてくれてるんだなとか、


自分を犠牲にしてでも守ろうとするその後ろ姿を支えたいって思って、さ……」


………


うわ…話しすぎた…


もう告白しようぜ…俺…


「…………」


靖友黙ってるし…


さっきまで書き進めてた勉強もペンを置いて止まってるし……


………気づかれた?


「あのサ、新開」


「な、なんだ、靖友」


「その、部屋に行くってのは男子寮を抜け出して女子寮に行くってことォ?


それとも……」


「………


あぁ」


「………男、子寮?」


「…………」


靖友、完全に意識してる、よな。


「それって、新開……」


「そうだぜ…俺は靖友のこと───」


「ホモだったのかよ!!!!」








え?


靖友?


なんでそんな満面の笑顔で…?


俺の告白に喜んでるって感じじゃなく…


そんで、なんでメモとペンをもってんの?


や、靖友????


「やす……」


「そうかそうか!おめーホモだったわけね!あーなるほど!


なんでもっと早く俺に言わなかったんだヨ!


やっぱ福ちゃんなんだろ!?あ、でもちっせぇ手だったら東堂……いや、うさぎ好き同士のオリコウチャンもありえるよな…」


靖友が暴走してる……


「まぁ相手は後で聞くとしてだな。


タチかネコかだってことだよな。重要なのは」


「え、それってもしかして…」


「まぁ俺らん中では攻めと受けっつーんだけどな」


「も、もしかして、靖友、おめさん………」


「あー、お前らには隠そうって思ってたんだけどよォ……








俺、腐男子なんだわ」





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