兄と弟と妹と
□修理費っていくら盛られてるかわからない。
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広い広い宇宙の、どこかの船の中で。
「だからー」
随分と間延びした声が聞こえた。
前で留めた髪がゆらゆらと揺れる。
縛られた体を左右に揺らして言葉を続ける青年が床に一人。
「悪かったっていってんじゃん、聞き分け悪いなお前」
「聞き分け悪いも何も悪かったで済まないからなこれ!?
どうしてくれんだこんな穴あけやがって!」
体から葉を生やした天人が青年の前で声を荒らげる。
視線の先にはぽっかり…いや、ぼっかりとと空いた大きな穴。
「そこから宇宙見えるよ、よかったな。」
「窓じゃねーし別に見たくねーんだよこっちは!」
「冴えねぇ船をこの世でたった1つのオリジナル船へとリフォームしてやったんだよ!
文句あんのか!」
「あるから今お前捕まってんだよ!」
「勘弁してくれよ…俺だって仕事で呼ばれたんだ、少しばかり遅刻したって目つぶれよ」
「…お前ほんとにあの《狂王・神羅》か…?
ほら吹いてんじゃねーの」
「疑うなよ!こちとら遅刻しそうだったから急いできたんだぞ」
「それで穴空けてたら説得力ねぇからな!?」
「…はー、もういいわ」
痺れを切らしたように青年、神羅は縄を軽々と引き千切り、大きく伸びをする。
「なっ、」
「仕事が終わったら直してやるから、お前の依頼で」
そのまま立ち上がり、その場をスタスタと去っていく神羅の背中を見つめながら天人は疲れた声で言った。
「…いや、空けたの自分だからな。」
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今の俺の目の前には、樹木のような体をした天人。
今回の依頼主だ。
依頼主の前には一通の
「…手紙?」
「ああ。これを地球の《江戸》へ届けて欲しい」
「…確かに俺は万事屋なるものですけど…。」
「ど?なんだ」
「そんなん郵便局に頼んでくださいよ、最近の郵便局は凄いんですから。置き配宅配ボックス非対面型と色々あるんですよ?」
「そんな色々あるのか。
だが、郵便局だと住所バレるだろう、内密にしたいんだ」
「…なるほど」
内密、ね。
その手紙を手に取り、懐に仕舞う。
「確かにお引き受けしましたよ」
江戸、か。
父さんの手紙も預かってるし、
久しぶりに会いに行くか。
01:修理費っていくら盛られてるかわからない。