過去拍手

□●大遅刻七夕
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とある日の鬼兵隊。

「はい、これ神羅の分っす」

「…?」

また子ちゃんから手渡された細長い水色の画用紙。
なかなか受け取らない俺にしびれを切らしたのか、訝しげに問われる。

「…まさか、知らないんすか?」

「いやいやいや、ちょっと待って、
ほら、あれでしょ、あの…」

どうやら地球のイベントということはわかったものの、何なのか全くわかっていない。
以前バレンタインの意味を取り違えたことを話したらまた子ちゃんどころか万斉にまで笑われた。
あの屈辱を晴らすべく必死に考える。

「…あ、あれだ!
人形飾って鯉吊るすやつ!」

「わかってないんじゃないっすか!
盛り込み過ぎっすよ!?」

どうやら違うらしい。

「七夕っすよ、七夕」

「…七夕?」

「短冊に願い事を書いて、竹に吊るすんす。
ついでだから、あんたのも吊るしてやろうと思って」

「へぇ…。」

「…なんすか」

「いや、また子ちゃんって変なとこ幼いなって」

「はぁ!?」

「バレンタインにしろ、七夕にしろ。
イベント事、案外好きだよね」


++++++++++++++



窓が1番大きくて、空がよく見える一室。
さらにもっと見やすい位置にソファーを(勝手に)ずり動かして、空を眺めていた。

「…天の川ねぇ」

聞いた話によると、年に一度の今日の日に
織姫と彦星とかいうカップルが天の川で出会うそうだ。

「よぉ」

音もなく現れる高杉は忍者にでもなればいいのに。
そしてそのままソファーまで近づいてくる。

「…随分と男前になったじゃねぇか」

「あぁ、でしょう?」

真っ赤な紅葉をつけた俺の左頬は、また子ちゃんによるもの。
それをクツクツと笑いながら、高杉は口を開く。

「膝」

「…。」

単語かよ。
緑の隻眼は俺に向いていて。
仕方なく少しずれて膝を軽く叩く。
遠慮なく乗せられる頭。お前は猫か。

「…かてぇな」

「当たり前じゃん、野郎の膝なんか固いもんだ」

「枕」

「ねぇよ。膝で我慢しろ」

「…。」

「…ガキ大将かよ」

仕方なく、上の服を脱ぐ。
適当な大きさで適度に柔らかくたたみ高杉の頭の下に入れた。
思いのほか満足してくれたらしく文句は言われなかったが、

「…。」

なにこれ、なんて状況?
なんで俺追い剥ぎされてんの。

「神羅」

「ん?」

「髪」

手を伸ばして俺の髪に触れてくる。

「その単語で話すのやめねぇ?!辛いんだけどなんか」

「髪、取れ」

「あ、これか」

なんだかよく分からないが結んでいた三つ編みを解いた。
そんな俺をみて、満足げに俺の髪に触れてくる。

「寝てるのに邪魔になるだろ」

「俺はてめぇのその髪型が好きなんだよ」

「…今日はえらい甘えるんだな鬼兵隊総督さん」

「今日は七夕だろう。
川に隠れてイチャついてる姫さんたちもいるんだ。」

これくらいいいだろう、といって高杉は珍しく優しげに微笑んだ。
 

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