あなたに恋をしました

□一目惚れでもそれは恋
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唐突だが

私は一目惚れはあまり信じない質だ。
一目惚れとはつまり相手の容姿に惚れたということだと認識すると、どうも顔が苦くなる。
要は容姿で判断しているってことだろう?
事実、私に声をかけてくる町娘のほとんどが一目惚れだった。
相手の内面も知らずしてどうして好きになれるのかがわからない。
やはり人間見た目ではなく中身ということですよ。

と、まぁ長々と思っていた10数年間を全て否定する出来事が起こった。

それは満月で、まるで俺たちの出会いを祝福するかのように、星の綺麗な夜だった。

息を呑んだ。
大方、お偉いがたの天人か、それか俺たち真選組に襲撃されたのだろう。
目前の男は、ところどころ怪我をしていて。
悔しそうに、しかし毅然とした態度で私を見据える、その瞳が美しかった。

+++++++++++++++

今日は珍しく多くの情報が入って、上機嫌で。
いつもの飲み屋で軽く飲んで帰路に着いていた時、どこかで見かけた顔。
橋の上でぼんやりと川を見つめていたら橋の下から視線を感じた。
ああ…?あぁ、手配書の。
桂小太郎を、みつけた。
なんて偶然だ、今日はついているなんて思った私は、職務を全うすべく捕まえようとした。たまには近藤さんにめいっぱい褒められたい。

刀を抜き、背後を取る。
桂がこちらに気づいた時、私は壁に桂を押さえつけ、喉元に刀を当てつけた。

(とらえた)

心の中でほくそ笑んだ時、月明かりが桂を照らし、それと同時に私の酔いも覚めた。
そして、見惚れた。
暫く無言になり、ようやく口を開いた時には2分半は経っていたと思う。

「…桂、小太郎だな。
「…人に名を尋ねる時は自分から名乗るのが礼儀であろう」

…それもそうか。

「失礼。
真選組特別隊隊長、咲城静空。
指名手配犯の桂小太郎殿とお見受けしますが」
「…あぁ。 」

それはどんな意味のあぁなんだよ。

「逃げないのか」
「もちろん、俺にはこの世の夜明けを開くという大仕事がある。
幕府の狗などに捕まっている暇などない」
「この状況でよく言えたなそれ。
今まさに捕まりそうになってるからねアンタ、毅然としてても劣勢だからね」
「これくらいのことで動じていては大志は成せん」
「…ふーん」

当てつけていた刀を下ろし、鞘に収める。
そんな私を困惑の目でみつめる桂。

「…なんのつもりだ」
「おかしなこと言ってもいい?」
「そうゆうの大好きだ。
…なぜここでア●雪なのだ!!俺はオ●フが好きだぞ」
「別に聞いてないよ。
…今回は見逃すよ。アンタのこと」
「…貴様真選組だろう」
「罠とかじゃないよ、別に。
現に私は今アンタを捕まえることができる。
でも捕まえない。
捕まえることができるのに、どうして騙すなんてめんどくさいことをする必要がある?」
「敵に情けをかけるのか」
「なんでそうなるのかね…。
見てみたいんだよ。
アンタのいう、夜明けってやつを。
それと、アンタに惚れた」
「…ハァ!?」
「私は一目惚れなるものは全く信じてなかったんだけどな、
一目惚れってこういう時のことをいうんだな。もちろん恋愛としてだ」
「お前人の話を聞かない質だろう!
なぜそうなった!」
「いや、別に捕まりたいならいいんだよ。
そうだな、私が出世したくなったら捕まえるよ。
だから、どうか。
それまで誰にも捕まらないで」
「っ…。」

驚きを隠さない桂に満面の笑みを返して、私は言った。

「好きだよ、桂」

一目惚れでもそれは恋

(その日が、すべての始まり)
 

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