あなたに恋をしました

□告げ口はバレたら怖い
1ページ/1ページ

真選組屯所、局長室。
俺の隣で近藤さんが困ったように笑っていて。
目の前には

「…今日はなんで呼ばれたんですか」

最近の頭痛のタネ、静空が正座していた。

「何でじゃねーだろ、自分の胸に聞いてみろ」
「土方さん、胸は答える物じゃなくて愛する者を抱きとめるものですよ」
「くせぇこと言ってんじゃねぇ!」
「何言ってんですか、近藤さんがこないだ言ってたんですよ!」
「えっ」

いきなり話を振られた近藤さんは困惑して頭に?を浮かべていた。
話が進まねーじゃねーか。

「こないだ例のごとくお妙さんにボロボロにされて、部屋で泣いてた時に言ってました」

『辛くないんですか』
『…俺の胸は愛するものを抱きとめるためにあるんだ』
『抱きとめに行ってぶちのめされてたらわけないですよ』

「あああやめて!
静空、頼むからやめてぇええ恥ずかしいぃいいい!」
「今日はそんなくだらねぇこと話すために呼んだんじゃねーんだよ!」
「はぁ」
「ーー最近、辻斬りが横行してるって噂聞いてるな」
「当然ですよ。
なんなら、そいつの腕がどーも刀にはみえない、化け物だーなんてことも。
ただイマイチ信憑性に欠けたので報告はしませんでした」

仕事の顔つきになった。

「知ってるなら話は早ぇ。
その辻斬りについて探って欲しい…と言いてぇところだが」
「?」
「明日から京都へ行ってもらう」
「唐突ですね、クビですか」
「ちげーよ!」
「明日から将軍様がお忍びで京へお出かけになるそうでな。
護衛に回って欲しいんだ。
辻斬りの件もあるが、お前なら私服で歩いてても怪しまれることはないだろう」

他の奴らはほとんど強面だからな、周囲に悟られかねん。と近藤さんは続けた。
当の静空は暫く考えたあと、

「…お土産買って帰ってやろう」

小さくそうつぶやいて、護衛を承諾した。

「…それじゃ私は失礼しま「待て」せん…。」
「まだ話はあるんだよ。
テメェ、まだ桂のこと追っかけ回してるらしいじゃねぇか…?」
「…。」

途端に顔が青ざめた。分かり易いやつだなこいつ。

「…誰から聞いたんですか。」

「花房だ。
あいつ、隊長が時折いなくなるから困るって嘆いてたぞ」
「…花房の野郎」

諜報部隊隊長の静空がこれじゃあ、副隊長の花房の苦労が目に見えるぜ。

「…ハァ。
何度も言うが、テメェはあくまで真選組隊士なんだからな」
「…わかってますよ。
私の交友関係に口出しし始めたら、それはもう子離れする時期ですよ」
「俺とお前そんな歳変わんねぇだろうが!」
「それに、私は普段私服だから周囲に悟られぬよう見逃しているだけであって…。」

確かにこいつには諜報活動という仕事上、市内でむやみに警察であることを悟られぬように振舞え、とは言っているが…。

「隊服を着たら、ちゃんと捕まえますよ」

着なかったら捕まえる気ねーんだろうが。
話を自己完結させて、局長室から出て行こうとする。
が、振り向いて、言った。

「つまり俺が心体共に桂を捕まえればいいんでしょう?」

とても、綺麗な笑みを浮かべて。



告げ口はバレたら怖い

(その後走り去っていった静空の部屋から、花房の悲鳴が聞こえたような聞こえなかったような)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ