あなたに恋をしました

□見つけるというより惹かれる
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(まいったな…。)

「お兄さん今一人ですよね?」
「かっこいいなぁって思ってて…よければお茶とかしませんか?」
「いや、ちょっと約束があるんで…。」
「そう言ってさっきから誰も来ないじゃないですか〜」

いつもどおり街の散策(勤務だよこれも)をしていたら女の子二人に声をかけられた。
逆ナンがどうとかじゃなくて、何がまずいかって…。

(ここに総悟でも通りがかられたら絶対言いふらされる!)

言いふらされることによって土方さんの耳にでも入ったら、下手したら切腹ものだ。
酷い、こんなに身を粉にして働いているのに。
…女の子相手にあんまり語気を荒らげたくないし、さて、どうしたものか…。
誰か通りがかったりしてくれないかと先程から待っていても見事に誰も来ない。
その時、

「ちょっと、どこ行ってたのよ」
「!」

私の着物を少し引っ張る手が見えて、誰だ誰だとその人物の方を振り返って驚愕。

「約束の時間、もうとっくに過ぎてるじゃない」
「あ、あぁ…。
ごめんね、ちょっと話してた」
「もう、行くわよ」

私の手を掴んで、その場を去ろうとする様子を見て、呆気に取られていた女の子たちがたじろぐ。

「あっ…。」
「ごめん、こっちが先約なんだ」

私の顔は今とても綻んでいるだろうなぁ。


++++++++++++++

しばらく歩いて。

「桂」
「桂じゃない、ヅラ子だ」
「ヅラ子、ありがとう」

桂…、ヅラ子は足を止めて私の方へ振り返った。

「…よく俺だとわかったな」
「寧ろ私がわからないとでも?
ホント助かった、それに…。」

繋いでいた手に力を込める。

「嬉しかった、ヅラ子が、私のことを助けてくれて」
「っ…。」

途端に赤くなるヅラ子の顔。
あぁ、可愛いなぁ。

「勘違いするんじゃないぞ、あれは…。
あれ、は、咲城が困っていたからじゃなくてだな、その…。」
「?」
「…あの女子たちに囲まれたお前を見るのが不快だっただけだ」

さらに顔を赤くしてそっぽ向くヅラ子。
ああもう何それ、なんなんだよそれ。



見つけるというより惹かれる

(自惚れてもいいのかそれは)
 

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