あなたに恋をしました

□女の嫉妬だけが醜いわけではない
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「・・・俺もう出張行きたくねぇ」
「あー? どうしたんだよ急に」

焼酎の入ったコップ持ってうなだれる俺は、ただの飲んだくれなんだろうか。
対して飲めるわけでもない酒を飲んで、たまたま出会った銀時に奢るから、と袖を思いきり引っ張り酒に付き合わせてます。
そんな俺は公務員なんだよな…。

「どーしたの、何時になく酔ってんじゃねぇの静空くん。」
「うるせぇよ。黙って飲んどけよ」
「なに君、なんなの君、飲むと口悪くなるタイプ!?」
「…。」
「なにやさぐれてんの。よかったら聞くよ?勘定お前持ちだからね」

水を一杯飲み干して、酔を覚ます。
やっぱり、そこまで酔ってないのかもしれない。
この感情を、酔いのせいに出来ればよかったのに。

+++++++++++

先日、
どういうわけか茂茂様に気に入られた私は、何度目かになるかわからないが京に向かう将軍様のお供をして。
それから江戸へ帰ってきて、かれこれ1ヶ月ほど会っていなかったこともあり桂に会いたくなった。
急ぎ足で北斗心軒へ向かうと、やっぱり桂がいた。
どんな風に声をかけようか考えながら戸を開けたけど、

(あ。)

「…何かが違ったんだ。
言葉で言い表すにはどういえばいいかわかんないけど」
「…。」
「それでも、どこか違和感があって」

厨房に立った幾松さん。
正面に座る桂。
談笑する2人。

「…桂はさ、北斗心軒に行く時、あまりエリザベスを連れてかないんだよな。
本人は無自覚だろうけど」
「…それで?
みすみす尻尾まいて帰ってきたのかよ」
「あぁ」

急用ができた、なんて見え透いた嘘を吐く私はさぞ滑稽だっただろう。

「まぁあの2人に何があったかっつーか…。」
「?」


+++++++++++


「…そうか。
幾松さんの親父さんが…。」

というより私的には武蔵っぽい人がお父さんということのほうが衝撃的のような。

「あいつらが妙に仲良く見えるとしたら、そのこともあったからじゃねーのか」
「…桂は未亡人が好きなんだろ」
「なんで知ってんの」
「前に銀時が酔ったはずみにそう言ったぞ。
まぁ、そうだよな。
…桂は女の方がいいよな」
「静空くんったら弱気なの??」

にやにやする銀時の足を強めに踏みつけてため息。

「…仕方ないだろ」




女の嫉妬だけが醜いわけではない

(あんな、朗らかな顔して)

(嗚呼私はちいさいやつだ)
 

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