あなたに恋をしました

□相容れないのはどちらでしょうか
1ページ/1ページ



「咲城隊長、どうですか」
「いやーまだ何も何も。
というか別にいいけどこれは私がやらなくてもいいんじゃないか?
双眼鏡除くのは別に隊長が動かなくてもいいんじゃないか?」
「隊長にしかできないんです」
「さらっと嘘つかないでよ花房。まぁいいけど」

江戸、かぶき町から少し離れた港の工場に私たちはいた。
花房の仕入れた情報によると今夜攘夷浪士たちがここで密会を行うとのことだ。

「にしても土方さん達遅いな」

今ここにいるのは私達諜報部隊10人弱程しかないため、大勢攘夷浪士が来たら制圧できるかわからない。

「俺達腕にはそんなに自信ないですもんね」
「俺も剣術苦手なんすよね」
「あーわかるわー」
「ひそひそ話はもう少し小さい声でしようなせめてな」

なかなか現れない攘夷浪士張り込みに疲れてきたのかだらけてくる隊士達。

「…。」

なんだか、月がやけに綺麗な日だな。
明るくて助かるけど。

「咲城隊長」
「んー?」

月を眺める私の後ろに花房が立った。
さすがというかなんというか、あまり音がしなくてビックリ。
花房はわたしよりハイスペックな気がする。

「…隊長は、桂小太郎が好きなんですよね」
「うん」
「でも、桂小太郎は攘夷浪士なんですよね」
「そうだな」
「…隊長は、真選組、なんですよね」
「あぁ。
お前らの隊長だよ」
「っ、ならなんで…。」

声を荒らげる花房に少し驚く。
お前が声を荒げるなんて、1年にあるかないかじゃないか?

「どうした花房」

そこでようやく私は花房へ視線を向ける。
今にも泣きだしそうな表情で、花房は続けた。

「っ、どうかしてるのは隊長の方ですよ!
隊長は真選組なのに、なんで!」
「花房、」

振り向いたら、何かが光った
月明かりに照らされて銀の光を放つ
それが刀だと気づいたのは、

私の腹部に刺さった後だった。



相容れないのはどちらでしょうか

(刺されたのは私で、刺したのは、)
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ