あなたに恋をしました

□重いのが長だから
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ぽたりぽたりと、落ちてきたのは水。

「っ、花房……?」

水が流れるその先は、花房の瞳からだった。

「っ…!
できるはずが無い……!
俺は、俺は…!」

力なく下ろされた刀。
顔に両手を当てて、うつむく花房に私は一体何ができるだろうか。

「俺はあんたの下で働くために真選組に入ったんです……!
あんたを、隊長を、殺すためなんかじゃない……!」
「花房…」
「俺は…!」
「……花房、すまなかった」
「っ!」
「私が…お前にこんなことをさせてしまったんだな。
お前を追い詰めて、攘夷浪士達と手まで組ませて」
「ぁ…、」
「私に、刃を向けさせてしまった。
私がお前をそうさせてしまったんだな。」
「違います、俺が…!」
「違わないさ」

そうさ、私が、
私が桂を好いたのは、
恋に落ちてしまったのは必然だとしても。
現を抜かしていたのだ

「…部下の異変に気付けないなんて、隊長失格だな」

そう、力なく笑うと花房の瞳からはもっと涙が溢れるばかりだ。

「隊長、せめて、最後は」

私の腹から下りて、刀を持ち直す花房。

「最期は、あなたが罰してください。
俺はもうあとには引けません。
あなたに粛清して欲しい。
真選組諜報部隊隊長、咲城隊長。」

「……あぁ」

断ろうと断らなかろうと花房は罰せられる。
最期は私に、というのならば私はそれに応えよう。
お前の思いを、命を背負おう

月が雲に隠れた。
私と花房は向き合い、刀を合わせる。
金属音が響き、時折雫が頬に触れた。
その雫は私のものなのか、花房のものなのか。

「……。」

互いに無言のまま刀を交え、

「っ……!」

私は花房を斬った。
ゆっくりと倒れた花房は、地に伏したあと私と視線を合わせ、
そして小さく呟いた。


重いのが長だから

(すいません、だなんて)

(どっちが)
 

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