兄と弟と妹と

□お土産選びは慎重に。
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「こーんにちはー」

ドゴッと嫌な音がしたので、何事かと玄関を見れば見たことのある奴が立ってた。

「あれ、呼び鈴ってどこだっけ」
「…お前がたった今壊したよ」
「久しぶり、銀さん」

にこやかに笑う神羅に俺は溜息を返した。


++++++++++++++++++++


「なんか静かだね。新八と神楽は?」
「今は夕飯の買い出し行ってるよ、中座って待っとけ」
「ふーん」

露骨に残念な顔をされた。
大方神楽がいなくてしょげているのだろうが、

「…しょげたいのはこっちなんだけど…。」
「? どしたの銀時、なんか悩み?」
「お前が壊したドアについて嘆いてんだよ!
いい加減呼び鈴の場所覚えろってんだコノヤロー!」
「俺さ、呼び鈴より効果的な呼び鈴って破壊音だと思ってんだよな」

途端に真面目な顔して言うものだから青筋が浮かぶ。

「わざとか? わざとなのかこれ」
「あ〜そういえばお土産があるんだけど。
結構糖度高めだから…糖尿の銀時には無理かなぁ」
「いやだなぁ神羅くん、そういう事は早く言ってくれないと」

途端に態度を変えた俺に、神羅は侮蔑の表情を向けた。お前の土産選びのセンスが、やけにいいのが悪いと俺ぁ思うんだよな。

相変わらずセンスのいい神羅の土産をつまみつつ、適当な世間話で茶を濁していると、半壊寸前の玄関から賑やかな声が聞こえてきた。

「ただいまー」
「銀ちゃんお肉激安で買えたアルー!この時間は狙い目ネ!」
「お、帰ってきたな」
「誰か来てるアルか?」
「神楽ちゃん、お客さんだったらマズいよ」

居間のドアをあけた神楽に、待ってましたと言わんばかりの微笑みを向ける神羅。あーあー、だらしねぇ顔しやがって。

「おかえり、神楽、新八」
「! 兄ちゃぁあん!」
「わっ、と…」

そんな神羅に嬉しそうに飛びつく神楽。

「おいシスコン兄貴、すげーだらしねぇ顔してんぞ」
「元からこんな顔してるよ」
破顔した顔で嬉しそうに神楽を抱きしめる。
神楽も頭を撫でられ恥ずかしそうにほくそ笑んでいた。

「お久しぶりですね、神羅さん」
「や、メガネの調子はどうだい新八くんよ」
「メガネの調子しか聞かねーのか!?」
「今日はどうしたアルか?」
「地球まで届け物があってな、それに、最近顔見てなかったし。
元気そうで何よりだ」
「すこぶる元気ネ!」
「はねっ返りすぎて手に余るぐれーだ」
「そかそか」

「神羅さん、夕飯食べて行きませんか?」
「つーかいつまでいんだよ。すぐ出んのか?」
「銀ちゃん!兄ちゃん追い出さないでヨ!銀ちゃんより兄ちゃんの方が仕事できるのに!」
「うっせーな!言うんじゃねーよんなこと!」
「同じ万事屋なのに何がこんなに違うアルか?」
「神楽ちゃん、もうやめてあげて、銀さん泣きそうだから、いじけちゃうから」
「今日の夜には出ようかと思ってるよ。
そろそろ家帰んないと洗濯物生乾きになりそうだし」
「いつから干してんですかそれ」
「1か月前から。なかなか家帰るときなくてさ。」
「じゃあ泊まってかないアルか…。」
途端にしょげた顔をして俯く神楽の頭に手をのせて、あやすように神羅は言葉を紡ぐ。
「ごめんな、またすぐ来るから、な?」
「…酢昆布」
「今度ちゃんと買ってくるから」
「いちご牛乳…」
「いや今お前関係ないよな、入ってくんなよ銀時」
「よく入っていけましたね今の会話に」
「…ま、夕飯くらいは食ってけよ」
「そうですよ!今日は久しぶりにすき焼きなんです」
「…お言葉に甘えようかな」
「キャッホイ!さっそく準備するアル!」
「あああ、神楽ちゃん!僕がやるから!大人しくしてて!」
「つーか、まだ15時だな…」



03:お土産選びは慎重に。
 

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