兄と弟と妹と

□ただいま、と言っておかえりが返ってくるとは限らない。
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「ただいまー。」

薄暗い部屋の電気をつけても、やっぱり何処か暗い。
その暗さにも、もう慣れたけど。
しんとした廊下を進む。軋む床の音だけがやけに響いた。
今日はまだ雨が小ぶりな方だからそこまで濡れることなくすんだ、コートもそんなに濡れてない。
居間の母さんの仏壇に挨拶に行って、そのまま自室に向かう。
ハンガーにかけるのもだるくて、どうせすぐ着るしとコートを文字通り投げやりに投げる。

「…あー。」

ベッドに腰かけて上体を倒す。あ、電球チカチカしてんな。替えねぇと…。
…お腹減った。
あれ、たしか数時間前に神楽んとこですき焼き食べたよな、もうお腹減ったんだけど。

「…冷蔵庫何もねーしなぁ」

ベッドをゴロゴロしてみてもどうにもならない。
諦めて体を起こして風呂へ向かった。
燃費の悪いこの腹は、外出先で満たすことにした。

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風呂から出て、今にも溢れ返りそうなポストを見る。
「まーたたくさん入ってんなぁ」

まぁ嬉しいことだけど。父さんの仕事とかぶると申し訳ない。

「討伐依頼多いな…最近雑事が多かったし、残弾補充したのいつだったっけ」

服を着替えて、武器の在庫を調べる。
うーん、足りない。出立前に調達してかねーと。
思い立ったら吉日、腹ごしらえも兼ねてすぐに向かおう。

「じゃあ、行ってきます。」

母さんに挨拶して傘を持った。先ほど投げやりに投げたコートを羽織る。

「行ってきます。」

行ってらっしゃいなんて聞こえないから
すぐにドアを閉めた。


「…あ、」

洗濯物仕舞うの忘れてた。



04:ただいま、と言っておかえりが返ってくるとは限らない。
 

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