兄と弟と妹と

□幼いからこそ厳しくせよ。
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過去話とか聞いても反応に困る時ってある。のちょっと前の話。



「「…。」」

(ちょっと銀さん、あれどんな空気ですか。)
(んなの俺にわかるわけねーだろ!
いきなり来て神楽はいるか?って唐突すぎるだろーが!)

居間には向かい合って座る神楽と神羅。
神楽に至っては正座で、どことなく震えている。

(でもかれこれ20分ですよ、あの沈黙。)

かくゆう俺らは寝室へ避難。重すぎる空気に胃がねじれそうだ。

(なんだよあの空気おめーよ重すぎるよ。)

「…神楽。」
「!」

神楽の肩が震えた。
ありゃ、怯えてんのか…?

「…喧嘩両成敗だ」

神羅はおもむろに立ち上がって、パァンと神楽の頬を叩いた。

(なっ、)

神楽の目には涙が浮かんでいたが、流れはしなかった。
堪えているようだ。

「…お前の話が本当なら、吉原で神威がお前にまたひどいことを言った。
それはまた俺が本人に直接話をしに行くが、神楽」
「…。」
「いつまでも、泣いてちゃ勝てないぞ」

やさしく、あやすような声。

「兄だろうがなんだろうが、神威に前のように戻ってほしいのなら。
お前ももっと強くなれ」
「…うん」
「神楽は頑張っているのかもしれない。
それは俺には分からない、ここにはいないから」

でも、と神羅はこちらをチラリとみた。
思わず重なった視線にどきりと体が跳ねる。

「少しずつでいいから、強くなれ。
心で神威に負けないように、もっと、もっと」
「っ、うん…」

ボロボロと、糸が切れたように泣き出した神楽。

「おいおい、泣くこたないだろ」

微笑みながら、困ったように頭を撫でる神羅。
先ほどまでの張り詰めた空気はどこへやら、いつもの2人だった。

(…とりあえず一軒落着、ですかね)
(だな…。)

「そろそろ出てこいよ。
銀時はともかく、新八まで覗きの趣味を身につけちゃだめだろ」
「なんで俺はいいんだよ」
「常日頃からしてるだろ?」
「してねーけど?!」
「初めはみんなそういうんだよ。
ほら神楽も、顔洗って来い」
「…うん!」

ぱたぱたと洗面所へ向かう神楽の背中を見つめながら、神羅は小さく溜息を吐いた。
兄貴っつーのは不器用でいけねーな、と他人事よろしく思いつつ、俺はその溜息に気づかないふりをして、いつもの椅子に腰かけた。

(…。)

++++++++++++++++++++

神威も神楽も
早く俺から離れてくれ。
頼むから、
早く…。


08:幼いからこそ厳しくせよ。
 

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