兄と弟と妹と
□いつまでも少年の心でいたら家族が泣くぞ。
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「こりゃまた…」
えらく暑いところに眠らされてますね、鳳仙さん。
吉原の端の崖っぷち。
日差しが眩しくて傘をさしていてもクラクラしそうだ。
持ってきた酒を墓前に置いて、合掌。
「…俺は、あなたのことを憎んでいたかもしれません。」
あなたに罪はないけれど、
神威がああなったのは、きっと、少なからず関係しているから。
でも、憎みきれなかった。
神威が強くなったのもまた、鳳仙さんのお陰でもあるから。
「…そっちは、どんな気分ですか?」
日差しを浴びた気分はどうですか?
俺ら夜兎族の天敵で、焦がれる者もいる、その太陽は。
俺も…。
「…。」
立ち上がり、一礼。
踵を返すと、いつの間にか俺以外にも客人がいたようだ。
「「!」」
「父さん…」
「神羅…」
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久しぶりに、息子に会った。
あいつの墓の前で。
久しぶりに見た神羅の姿は、どこか。
「…痩せたか?」
「…ちゃんと食べてるよ。
父さんこそ、忙しいからって疎かにしてない?」
「大丈夫だ」
「そう、よかった」
「…。」
「? 何、父さん」
俺の視線から逃げるように、神羅は傘を俺に向ける。
「…いや」
親殺しを実行したのは神威だが、
俺が一番恐れているのは神羅かもしれない。
「…たまには、帰ってきてよ」
「…あぁ」
「いつもそればっかり」
傘越しに、神羅は優しく笑った。
母ちゃんのように、優しく、儚く。
そのまま神羅は去っていったが、
初見で感じた違和感はなんだったのだろうか。
11:いつまでも少年の心でいたら家族が泣くぞ。