兄と弟と妹と
□君だけ一人置いていく。
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宇宙において、夜に生き物の声なんて聞こえない。
船のエンジン音くらいだ。
時刻は25時くらいだろうか、眠れない。
寝ていられない。
「っ、がはっぁ、ごほっ、…っ。」
…昼間に食べたものは全て出てしまっただろうか。
洗面所の壁に背中を預けてへたり込んだ。今日は特に酷かったな。冷や冷やした。
口を濯ぐ気力もなく、寝間着ということも忘れて手足を投げ出した。
「…まだ、まだ倒れられねぇよなぁ」
「…ククッ」
「!」
窓から差し込む月明かりに照らされて、あの瞳が俺をみた。
「…会合は明日じゃねーのか」
「早く来て悪いことはあるめーよ。随分と苦しそうだなぁ」
そこに立つ高杉は笑った。
「ほっとけ。
嗤いたきゃ嗤えよ。
無理に長らえてもいつかは死ぬ。
…あいつらも、お前も置いてな」
「…だからなんだ」
「…いや、相手がどうであれ、自分の大切な人たちを残して逝くのは辛いな」
いま自分は笑えているだろうか。
「ならどうして生きたいともがかねぇ」
高杉の口調が少し強くなる。踏み込まれた右足。反射する親指の爪の反射に、静かに瞳を閉じる。
「…お前が生きたいなら、しがみつけばいいだろうが」
「…もう既に、しがみついてるんだよ、これでも」
「…。」
「…もう、どうにもならないとこまで来てる。自業自得なんだけどな」
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自業自得だと力なく笑う神羅が、酷く哀しげな表情を浮かべるものだから。
「…。」
何も言えなくなる。
なぁ、神羅。
お前の目には弟妹しかうつってねぇよ。
その瞳に、俺をうつさなくてもいいから、
せめてお前は、壊れんじゃねぇ。
14:君だけ一人置いていく。