兄と弟と妹と

□真っ白な病室なんてそうそうない。
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「…。」

目を覚ますとそこは真っ白い壁やベット…
ではなく。

「よーぉ。」

暗い病室で月明かりに照らされ鈍い銀髪が動いた。

「…銀時」

ああ、暗いからよくわかんなかったけど、ここ病院か。
上体を起こすとベットに倒れかかるようにして眠る神楽。
後ろには椅子に座って眠る新八。
ついててくれたのか…。
嬉しさと同時にここに神楽たちがいるという状況に背筋がひやりとした。
大方、銀時の前で倒れて運んでくれたんだろう、それはいい。そこはいいんだ。

「…。」
「…安心しろ、神楽には疲れと寝不足がたたったって言ってあるからよ」
「! …助かった、ありがとう。いろいろと」
「お前2日も寝てたんだからな…詳しいことは明日医者に診てもらってから聞くことにすっから、とりあえず今は寝てろよ」
「…いや、目が冴えて寝れないんだ」
「さっきまですーすー寝てただろうが」
「あれはあれこれはこれ」
「ガキか」

半ば強制的…というか強制的に、額を押さえつけられてベッドに倒された。

「目の下に隈作って何言ってんだ」

鷲掴みにされた手のひら越しに銀時の顔を見る。
銀時、お前にも隈できてるよ。


++++++++++++++++

翌朝。
神楽には過労だから、大丈夫だから、と何度も言い聞かせた。
…最終的には圧力で黙らせたにすぎないが。
2日間、あの神楽がロクにご飯を食べてなかったそうなので新八とご飯へ向かわせた。
兄ちゃんの分も買ってくるアル!と喜々として言ってはいたけど
…多分道中でなくなるんだろうなぁ…。

「…聞いてますか」
「あーはいはい聞いてます、で、俺の頭が何だって?」
「何も聞いてねーじゃねーか頭パーンすっぞてめぇ!」

説明してた医者よりもそばにいたおばちゃん看護婦に怒られた。
何だこの人すげぇ迫力。怖い。

「神羅さんの病気ですがー…。」


++++++++++++++++


「神羅兄ちゃーん!」

勢い良く病室のドアを開けて神楽と新八が入ってきた。
両手には大きな買物袋。
一体いくら分買ったんだと苦笑が溢れる。

「診察どーだったアルか?
どっこも悪くないヨね?」
「大丈夫大丈夫。
それよりそんな声大きくしてると看護婦に怒られるぞ、すごい怖いタイプの」
「もうさっき怒られたネ!」
「あ、そう…。」

ふと、新八が銀時に渡していた広告に目が行く。
良く見れば神楽もそれを手にしていた。

「それ、どうしたんだ?」
「これアルか?
さっき帰り道に近日オープンって書いてあったからもらってきたアル!」
「この広告についてるクーポン券を使うと安くしてもらえるみたいで。」
「おー!ここパフェ専門店じゃねーか!」
「今度兄ちゃんが来た時にみんなで行こうネ!
それまで待ってるから、体休めてからまたリバウンドヨ!」
「神楽ちゃん、それなんか違うよ」
「そうか…。」

渡された広告を見ると[近日オープン]とでかでかとした文字。

「今度、行こうな。」

銀時から困惑を孕んだ視線を感じる。

俺は今笑えてるかな。


小さな俺が、頭の中で

[嘘吐き]と小さくつぶやいた。

[今度なんて、ないくせに。]

最愛の妹へ、初めて嘘を吐いた。






「神羅さんのご病気ですが…。

もって、よくてあと半年といったところでしょう」



18:真っ白な病室なんてそうそうない。
 

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