兄と弟と妹と

□嘘ついたらハリセンボン
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数年前――――

宇宙惑星ー洛陽
一年中日の当たらない、その場所に俺はいた。


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今日は少し雨が強いな。
ただでさえジメジメした薄暗い気候が続く場所なのに、もっとジメジメしてくる。
傘越しに空を見上げると空は真っ暗。

「…今日は何を作ろうかな」

家路に続く石段を登りながら先刻終えた買い物の品々に思いを馳せる。

「カレーなら日持ちするし…」なんて考えていたら近づいてくる爆音。
さっきから騒がしいとは感じていたがこれは俺の家の近く…つまり、俺が爆音に近づいて行っているのか。
そんなに珍しいことではないけれど、一体誰が何やってんだ…。

「神羅兄ちゃん!」
「神楽!?」

石段の上に神楽の姿が見える。
なんで傘もささずに外にいるんだ…?
急いで石段を上り終えると神楽が泣きついてきた。

「止めてヨ、兄ちゃんとパピーが、
死んじゃうヨ、兄ちゃん…!」
「父さんと、神威が…?」

神楽は泣きじゃくっていて、
涙やら何やらで顔をくしゃくしゃにして。
服もどこか汚れている。泥だろうか。

「っ…何が起きてんだよ…!」

買い物袋なんてかなぐり捨てて神楽を抱いて走った。
軽く過呼吸になりかけていた神楽をあやしつつ、爆音のする方へと足を早める。
速く、早く
少し入り組んだ路地を抜けて、

「っ、父さん!神威!」

俺が見たのは、

「!」

片腕のなくなった父さんと、服をおそらく返り血で汚しながら傘を振りかざす神威。

「、なんだよこれ…。」

父さんは、愕然としてしばらく立ちすくんでいた俺をほんの一瞬だけ見て叫んだ。

「神楽と母ちゃんを守れ、神羅!」

今起こっている出来事とは裏腹に俺の頭は酷く冷静で。
俺達夜兎一族に伝わる古の風習、親殺し。
まさか神威はそれを行ってるのか…?
そんな、当の昔に衰退したような風習を…。
どうして…!

「神羅兄ちゃぁん…。」

震える神楽の声で意識を戻した。
神楽をきつく抱きしめて、優しく、

「…大丈夫だよ、神楽。
こんなこと、すぐ終わるから」

囁くように、自分に言い聞かせるように

「もう二度と、こんな酷い日は来ないよ」
「にい、ちゃん…。」

しゃくりをあげる神楽に微笑んで、続ける。

「神楽、今すぐ家に帰るんだ。
みんないなくなって、母さんきっと心配してる。
母さんを安心させてあげるんだ。行け、」
「でも、」
「大丈夫、すぐに兄ちゃんが2人を止めるよ。
そしたら夕飯作ってご飯食べよう。
ほら、危ないから早く行くんだ神楽」

雨が強くなってきた。垂れてきた前髪を結び直して、神楽の背を押す。

「っ、うん…!
絶対、絶対ヨ!」

家に向かって走り出す神楽の背を見送ることなく、
神威と父さんの元へと走った。



23:嘘ついたらハリセンボン
 

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