兄と弟と妹と

□待ち合わせの時間を決めましょう。
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神威の親殺しから数日。
俺が不在の間に神威は家を出て行った。
俺と、母さんと神楽。
父さんは元々仕事上なかなか家に帰ってこなかったので、特別何かが変わるわけではなかったけど…。
そして母さんは神威に看取られることなく静かに息を引き取った。
神威も、そこにいたと母さんは信じていた。
俺と、父さんと、神楽だけじゃない。
ちゃんと神威もそこにいたのだと、心から思っていた。

神威は、風の噂では鳳仙さんの弟子になったとか聞いていた。
鳳仙さんのところならまぁ、悪いようにはしないだろうと小さく安堵。
変なところに首突っ込まれるより、犯罪シンジケートに首突っ込む方がまだマシだなんて、変な話だけど。

家は俺と神楽の2人になった。
父さんは…出たり入ったり。
俺も仕事で家を開けることはあったが、神楽と平和に暮らしていた。
暫らくするとそんな平和を壊すように俺の病気が発症したが、

それでも、俺は幸せだったんだ。

数年後、どこで覚えてきたんだとつい聞きたくなるような言葉を話す年頃になった神楽は、出稼ぎに地球に行った。
出稼ぎに行くことは反対ではなかったが、そんなに貧困だったわけではないのだけれど…とちょっとだけ不満を一言。
けれどこれも社会勉強かと、元々放任主義だしななんて納得させて見送った。

そして、俺はあの家に1人になった。

今だって、俺は
母さんはもういないけれど、それでも
幸せだったあの頃にまた戻れることを望んでいる。



25:待ち合わせ時間を決めましょう。

(きっと、)

(きっと、戻れるから)
 

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