兄と弟と妹と

□案外下は仲がいいものだ。
1ページ/1ページ


「やれやれ、本当にバカな妹だ。
戦いの基本は敵をしり、己をしる事さ」

ああ、本当に馬鹿なやつだ。
力の差がこんなにも出ているのに、どうしてまだ向かってくるのかわからないよ。
勢いよく幹に当てられた腹を抱え、咳き込む妹を他人事のようにみつめる。

「よく見ろ、己の股下の長さと。
お前の敵を」

それでも、強くこちらを見つめる瞳は、
兄さんを思わせる強さで、それが無性に苛立つ。

「…お前は、兄さんのことをずいぶんと高く見ているようだけど」
「!」
「兄さんも、俺とさして変わらない。
結局は血で戦う夜兎だよ」
「…神羅兄ちゃんは、お前とは違うネ…。」

ふらふらと立ちながら、強くこちらを見据える。

「…同じだよ。
お前は知っているのか」
「?」
「兄さんの秘密を」

一瞬驚いたように目を見開いてから、酷く小さな声で呟くように言った。

「…。」

やはり、そうか。
ココ最近の違和感が確信に変わった時、背中が震えた。
あぁ、この感じは兄さんか。
来ると思ってたよ。
森をかき分けて、それは、兄さんは来た。
俺達の姿をみつけて、足を止めた兄さん。
一呼吸置いて、「何してんだ。」そう言った。

ねぇ兄さん、兄さんは昔はそんなこと言わなかったよ。
俺と神楽が喧嘩してても、仲裁には入ったけど。

「どうしたの、兄さん」

そんな、目の色を変えるような怒り方はしなかった。

「…俺は何してる、って聞いたんだよ、神威」

呆れたような、心の底から吐き出した溜め息が俺の耳を通り抜けた。

「神羅、兄ちゃん…。」

兄さんはそんなに[兄妹仲]について騒がなかった。

「…ねぇ、兄さん」
「…なんだよ」

「兄さん、俺達に隠してることあるよね」

俺が親殺しをする、までは。



26:案外下は仲がいいものだ。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ