兄と弟と妹と

□下の心上知らず。
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兄と弟と妹がいました。


兄は家族が大好きでした。

弟と妹を特に愛し、よく喧嘩し、よく泣き、よく食べる2人が大好きでした。
兄は家族へたくさんの愛情をそそぎました。
だからこそ、兄は2人に仲良くして欲しいと思っていました。

自分がいなくなっても、2人で支えあって欲しいと望んでいたのです。


弟は家族が大好きでした。

弟は家族を守る力が欲しかったのです。そして、その力を持つ兄を慕っていました。
逆に、力を持たず、よく泣きよく笑う妹をどう扱えばいいかわかりませんでした。
けれども妹のことを、守るべき対象としてみていました。
ですが次第に、力を持たない弱い妹への興味は薄れ、ただ強さだけを求め始めます。
弟は兄を慕い、そして兄から愛されていることを知っていました。
それだけでよかったのです。

だからこそ、兄の隠し事に気付いた時は戸惑いました。
兄に隠されていたということは、弟にとってとても悲しかったのです。
弟がその感情を[悲しい]と理解していたかは、わかりませんが。


妹は家族が大好きでした。

1番目の兄は優しく、時に厳しく自分を甘やかし愛してくれる。
2番目の兄は態度こそ冷たいものでしたが、幼い自分を周りから守ってくれる。優しい兄だと思っていました。
例え伸ばした手を、握り返すこともなく触れることも無く、一瞥だけして踵を返されたとしても。
心の底から嫌うことなんて、できませんでした。
妹は、本当に兄2人のことが大切だったのです。
だからこそ、1番上の兄がいなくなってしまうのではないかと思うと不安で堪らなかったのです。
妹は2番目の兄とは不仲でしたから、その間をなんとかとりもっていた兄がいなくなってしまったらもう戻ることなんてできません。
兄を失ってしまっては、あの頃の、大好きだった温かな家族に戻ることなんてできません。

1番上の兄に頼りきりではいけない。妹は立ち上がる力をつけました。
2番目の兄と、正面から向かい合う力を。



兄の異変に、違和感に
弟と妹は、気づいていたのです。




27:下の心上知らず。
 

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