兄と弟と妹と

□死にゆく兎の生きざまは
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『この騒動が一段落ついたら、ちゃんと話すよ』

神羅兄ちゃんはそう言ったアル。

『その前に、場違いなお客さんを倒さないとな』

私の頭を撫でて、いつもの笑顔で。
兄ちゃん、ホントだよネ。
もう隠したりしないでヨ。

「これが噂の天導衆とやらか…生で見るのは初めてだな」
「へぇ、兄さんでも知らないことってあるんだね」
「聞くよりも見る方が鮮明ってな。
まさかここまで弱いとは思ってなかったけど。数だけか」

私は銀ちゃんを、神威は高杉を肩に担いで天導衆を蹴散らす。
神羅兄ちゃんは私達4人の前に立ちはだかる天導衆らを倒し、道をつくっていた。

「…そろそろ、敵さんも少なくなってきたな」

兄ちゃんは私たちの後ろに回り、敵の方へと走り込んでいく。
神威も驚いた様子で後ろを振り返った。

「神羅兄ちゃん!」

てっきりこのまま一緒に帰れると思っていたから、思わず大きな声で名前を呼んだ。
振り返った兄ちゃんはニッと笑って片手をあげる。

「殿がいるだろ。こういう時はさ」
「しん、がり…?」
「お前らがちゃんと逃げ切れるように、俺が退路をつとめさせてもらうよ。」
「…兄さんはどうするの」

納得のいかない感情を含んで神威は問うた。

「俺はちゃんと戻るから。
そうだな、頃合が着いたらちゃんと連絡するよ」

どんどん離れていく距離。
追いかけたいけど、銀ちゃんを新八たちのところへ運ばなければ。
…兄ちゃん、私、知りたいことたくさんあるアル。
久しぶりに兄ちゃんのご飯食べたいネ。
だから、

「神羅兄ちゃん!
絶対、絶対帰ってきてヨ!
約束だからネ!」


叫び声は、果たして届いたのだろうか。




30:死にゆく兎の生きざまは

(それから何日待っても)

(連絡は来なかった)
 

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