兄と弟と妹と
□秘密を抱えるにはあまりにも
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あの日
神羅が倒れ、俺が病気のことを知ったあの日。
神楽は既に神羅の異変に気付いていた。
だが、何も言わなかった。
神羅も、神楽も
大事なことは肝心の相手に伝えず、第3者を介入させる。
人様の事情に口出しすんのは如何なものだが、それにしたってこいつらは
(家族ってのはそういうもんなのか)
心配だからこそ、怖いからこそ秘密を抱えようとする
知らぬ振り、気づかぬ振りで
そうして…
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「兄ちゃんに、聞けたアル」
俺が高杉や天導衆との戦いを終え、療養中の時。
神楽は俺にそう言った。
「ちゃんと、神羅兄ちゃんの病気のことも聞けたし、今度兄ちゃんのご飯、久しぶりに食べるって…。」
途中から涙ぐんで、声が聞こえねぇ。
「でも、でも神羅兄ちゃん、あれから何の連絡もこないアル…。」
決壊したように涙を溢れさせる神楽。
そうか、お前は
「…聞いただけで、話せたわけじゃねーんだな」
痛む腕をあげて神楽の頭にのせる。
返事は聞こえなかったが、神楽は激しく頭を上下させた。
お前ら兄妹はいつもそうだ。
大事なことなら尚更、伝えようとはしない。
家族なら、互いを想うのなら
(…どうして正面向き合って話せねぇんだ)
それを言えない、俺もまた
31:秘密を抱えるにはあまりにも
(俺は家族を知らなかった)