兄と弟と妹と
□アフターフェスティバル
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万斉先輩らの方で何かあったのか。
あちらこちらで煙は上がり火はあがり、前を往くチャイナ女の後を走る。
見渡せば倒れている人、人、人
「っ…晋助様…!」
どこ、どこに、
一体どこにいるんスか…!!
頭上で激しい爆音が聞こえて上方をみる。
落ちてくる仲間達。それに紛れて見えるのは
「晋助、様…」
そして落ちてゆく晋助様を庇うようにして抱き抱える神羅の姿が目に映った。
認識した瞬間、足は動いていた。
落ちてしまう、このままでは。
降り注ぐ瓦礫の雨を避けながら、神羅たちの元へと走る。
待って、待って
こちらに気づいた神羅は一瞬目を見開き、私の伸ばした手を掴もうと手を伸ばした。
あと少し、あと少しで届く
私の腰に手が回った。チャイナ女だ。
何かを叫んでいた。
私も何かを必死に叫んでいた。
あ。
(触れた、)
私の手と、神羅の手が触れた
しかし掴むことなく手は空を切り
「っ、晋助様ぁぁあああ!」
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掴めなかった。
また子ちゃんの手を掴めず、落ちていく体。
地面が近づく。
高杉を強く抱きしめ、せめてこいつだけでもと願う。
空中じゃ身動きがとれやしない。
「っ…くそっ…!」
地面に叩きつけられると思い強く目を瞑った。
「兄さん、」
「!」
多少の衝撃はあったものの、叩きつけられることなく俺の足は地面についていた。
「情けない顔しないでよ」
「かむ、い」
下で受け止めてくれたらしい神威が、にこやかな笑みを浮かべていた。
突然の神威の登場に驚く俺を他所に、神威は高杉に羽織をかけて踵を返す。
そうだ、高杉
「おい、高杉!高杉!」
息を確かめる。心臓は動いていた。
安堵した俺に続くようにまた子ちゃんたちが上から降りてきた。
「借りはきっちり返したよ」
神威がそう言い残したことなど知らぬ俺は、
この後、どうしてこの時に神威を追いかけなかったのかと酷く後悔することとなった。
37:アフターフェスティバル