兄と弟と妹と
□探し者は呼んでも出てこない
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どうやら俺はそこから降ってきたらしい。
朧気な記憶を探る
神羅の焦ったような声が頭をよぎった。
俺は仄黒い空がこらえきれなくなってこぼした最初の雨か。
それともさんざん泣き散らしてふみとどまろうとこぼした最後の雨か。
どちらでもある気がするし
どちらでもない気がする
長い眠りから目を覚ました。
目を開くとまた子ら鬼兵隊のやつらの姿が見えた。
神羅がいないことは気になったが、それよりも
一つだけ確かに言えるのは
もう
雨はごめんだ
「神羅…」
小さくつぶやいた俺の声をまた子は拾った。
「神羅が晋助様を庇ってくれたんすよ!」
泣きじゃくりながらそう言うが、今ここにあいつはいない。
まだ完全には回らない頭で考える。
まだ、まだ気配は残っているのに
38:探し者は呼んでも出てこない
(どうしてお前はここにいない)