兄と弟と妹と

□烏の見分けってどこでつけるの
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その烏の来訪にいち早く反応したのは阿伏兎さんだった。
その後に父さんが応戦、それに続く形で俺も傘を強く握った。

「パピィィイ!」

父さんの左腕はちぎられ、砲弾の雨が俺らを襲った。

「くっそ…!神威!神楽!!」

声が届かない。

「…あなたは」

烏が俺の背後にいた。
父さんの安否も確認したいがそれどころではなさそうだ。
すぐに距離をとって傘を構える。

「…あんた、天照院のもんだろう。
地球で見かけたよ」

足が震えている。
怖いのか、この烏が。

「…うずいているんです」
「…は?」

烏は胸に手を当てる。
そして続けた

「私の中のアルタナが、血が。
君をみた瞬間からうずいている」
「…アルタナと、血」

兄弟…なわけないだろう、見るからに実年齢が雰囲気とあってなさそうだし。

「…何を言ってんだ、お前」

嫌な汗が頬を伝った。

「先程から感じていた感覚は、星海坊主に向けられたものだと思っていましたが…どうやら違うようだ」
「っ、何のことだ!」

声を張り上げる。
その瞬間どくんと心臓が大きく脈を打った。

「っは、」

どくん、どくんと脈打つ鼓動に、力が抜ける体。
どうして、傘を握れない。
足から力が抜けていき、膝をついた。
こんな正体不明の烏の前で膝をつくなんて自殺行為のようなものだ。
しかし力は入らない。
それどころか胸が苦しくなって地面に倒れ込む始末。
いつもの発作かと思ったがこれは違う。
一体なんだ、これは、なんだ

「神羅ぁあ!」

父さんの声が聞こえる。
煙をかき分け、右腕で傘を握り父さんは現れた。
そのまま烏へと噛み付いていく。
俺も戦う、待って父さん
今立ち上がるから、

「がはっ、ぁ、はっぁ!」

こんな時に喀血まで重なる、なんだ一体、くそ

「神羅!どうした!おい!」

俺の異変に気づいた父さんが駆け寄ってくる。
大丈夫だよ、と返したいのにまともに声を発せれない。

「神羅!ペンダントがきいてないのか?!おい!」

烏は小さく囀る。

「…彼は他星のアルタナの加護を遺伝している」

そのまま、耳を疑うような言葉を烏は続ける。

「地球で瀕死の状態で倒れていたところに鉢合わせ、
私が彼に血を飲ませました。」
「!」

そうか、あの時の男はこの烏だったのか。
あの時に飲まされた血。あれはおそらく…多分、きっと他星アルタナの加護を受けたこの男のもので。
確かに他星とはいえ、あの時に血を飲まされたから生き延びれていたのかもしれない。
しかし。
母さんの星のアルタナの加護を遺伝している俺にとってそれは
とんでもない死刑宣告にも聞こえた。



41:烏の見分けってどこでつけるの
 

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