兄と弟と妹と
□反省は次に活かさなきゃ意味がない
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「病原菌一家」
そう言って俺ら一家を蔑む言葉は何度も聞いた。
その度に返り討ちにのしては、父さんに俺がたんこぶをくらうことの繰り返し。
「俺は1人なのに相手は8人だよ?
弱いものいじめされてるのは俺の方だよね」
「うーん…。」
兄ちゃんは少し考えてから困ったように答える。
「神威は強いから、十人力ってことだよ、きっと。
それより、またそんな事言われたのか?どこの誰だ?」
兄ちゃんは俺と違って強いからからかわれたりしない。
兄ちゃんにそんなことしようものならどうなるか、あいつらだってわかってるからだ。
だから矛先が俺へと向かう。
かといって、兄ちゃんに相手を教えると決まって新しい傷を作ったあいつらがまた俺の前に現れるのだ。
「兄ちゃんに教えてもどうにもならないよ」
唇をとがらすと少し悲しそうな顔をして頭をなでてくれた。
「…神威、お前はお前でいいんだよ」
「!」
「父さんの後を追いかけてばっかだと毛根が危なくなるよ」
茶化したように兄ちゃんはそう言ったけど、母さんと同じことを言われた。
「強さなんて人それぞれだから。
俺だってお前よりは強いかもしれないけど、父さんには適わないしな」
「…。」
ねぇ兄ちゃん、強さって何なの?
俺にはわからないよ。
妹を守るだけの力もなくて。
母ちゃんを支えるだけの力だってない。
俺に何ができるの?
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「────あの時」
俺は母さんを連れ出せなかった。
家族じゃなくなっても、よかったから連れ出してしまいたかった。
「もう同じ轍は踏まないよ」
肩に担いだ兄さんの体は細かった。
あと少し、あと少しだよ
あの時の俺は弱かった。
あの男に勝てなかった、船に母さんを乗せられなかった。
でも今は違う。
あの男に勝って、強さを証明して、
そして兄さんを母さんの星へと連れていこう。
弱かったら守れない
強かったら、俺は今度こそ守れるんだ。
だから一緒に行こうよ、兄さん。
あと少しであの男と決着がつけれる。
決着がついたら、俺が勝って、そして
「一緒に行こうね、兄ちゃん」
43:反省は次に活かさなきゃ意味がない
(俺は今度こそ守る)