夢ヲ見テイタ

□Chapter. 4
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部屋着に着替えて自分の部屋で勉強する。
南野秀一は未だに寝たまま。
そんなのをそっちのけで、眼鏡を掛けてシャーペンをカリカリと動かす。

普段はコンタクトレンズをつけているのだが、部屋にいるときはいつも眼鏡を着用していた。

「染色体…。紡錘糸…。細胞膜…。核…。」

生物のワークを答を言っていきながら解いていく。



「DNAの別名は?」



後ろから問いかけられたので、私は反射的に答えた。


「DNAの別名はデオキシリボ核酸…」

そう言いかけると私は振り返った。

「生物の勉強ですか?」

「南野秀一…いつの間に…。」

私は少しビックリした。

「ノックしたんですけど、返事無いんで勝手に入りました。」

「…分かったから、用がないなら出ていって。」

私はシャーペンを持ち直して、再び勉強に戻る。
すると、シャーペンを持っていた手に大きな手が重なる。
私の左肩に、もうひとつの手が置かれる。

「出掛けませんか?僕と一緒に。」

耳元で囁かれると、私は振り払う。

「おっと。随分乱暴ですね。」

「あなたと一緒に出掛けもしないし、教えてももらわなくて結構!もう帰って!」

私は南野秀一を突き飛ばそうとするが、よろめきもしなかった。


「そんなに嫌ですか?僕のこと。」

「嫌いじゃなくて、大っ嫌いの間違いじゃない?私、やっぱりムリ。一緒になんていらんない。」

私がそう言うと南野秀一は髪の毛をかき揚げる。

「そんな理由で引き下がるとでも?」

"あーーーーーっ!もうオレコイツホントにムリ!"

Bちゃんがギャーギャー喚く。
私もムリ。


「僕が頑固なの、知ってるでしょ?」


南野秀一は私にグイグイ近付こうとする。
私は一歩一歩引き下がる。

とうとう逃げ場を失って壁際に立つ。
そんな事も全て計算尽くされていて、南野秀一は私の前に立つ。横から抜けようとしたが、南野秀一は壁にドンッ!と手を打ち付けて私を通そうとしない。もはや八方塞がり。

見上げるようにして、南野秀一を見る。



「怖がらないで。僕を、見て。」




私はビクビクしながら縮こまって南野秀一を見る。


……怖い。


"良いムードじゃない。そのままキスよ、キス。"

お色気全開のDちゃんが私にキスしろと促すが、私は無視した。
そんなの、死んでもやりたくもない。

「君は、僕じゃなくて、目の前にある人の温もりと、人間の愛に怯えている。それもまるで、外の世界を知らない生まれたての子犬のように。君は、幼いときの傷が癒えていないんだ。」


分かってる。

分かってるけど…。でも…



「顔上げて。」




うつむく私にそう言うと、南野秀一は私を抱き寄せた。



「は…離して!!イヤ!怖い!」

私は南野秀一の腕の中で手を震わせながら言う。
でも、離してくれるわけもなく…。

「離しません。」

「あんたなんか大っ嫌いよ!!だから離して!殺されたいの?!」

私は自分でそう言うと、ふと、夢の事を思い出した。


『コロセ…。コロスのだ…』



『腕を切り裂き、吹き出すマグマをミナモに浸けて…』







南野秀一を…コロセって事なの?



違う。

南野秀一じゃない。



なんなの…?





『人と言うのは欲で出来ている。』



「…た……すけ………」


私は瞳に涙をためながら、助けを求めようとする。
視界がぼやけ、何が起きてるのかパニック状態になっていた。


「大丈夫。僕は、いつでもあなたの味方ですよ。」


南野秀一は、私の頭を優しく撫でながら私を落ち着かせようとする。












「私ッ……!死んじゃうかもしんない…ッ!」
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