夢ヲ見テイタ

□Chapter. 6
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「…妖怪の蔵馬くん?」


私が挑発的な態度で問いただす。
でも、私はすぐに気を取り直した。

「まぁ、それを知ったって別に口外する相手なんて居ないし。そもそもメリットもデメリットもない。あるのは南野秀一本人がどう思うかで、黙っていたことの罪の意識が変わってくるっていうだけ。そう言うことで、どうも来てくれてありがとう。ワタシの中で唯一あなたの存在を認めているのはCちゃんだけで、Cちゃんを振ったら、完璧に私とは繋がりもなくなる。」

私が言葉を重ねるたびに南野秀一の顔がひきつっていくのが分かった。
そんな表情を見ても動じない私。
そこまで私は優しくはないから。

「…分かったら、消えて。部屋を片付けないといけないんだから。」

私はそういい放つと、南野秀一は私に向かって手を伸ばし、私を引き寄せようとしたが、結局躊躇い、そのまま出ていってしまった。
それは、賢明な判断だ。

「陣…でしたっけ。あなたも帰りなさい。結婚もしないし、子どもも作らない。さぁ、どきなさい。」

短いスカートを揺らしながらそう言うと、正面にいた陣が真っ向から私にしがみついてきた。

勢いに負けて、私は後頭部を強く打撃した。

「何をするの!?ガラスがあったらどうする気?!」

口調は強くなる一方で、陣は私の腰に腕を回したまま離さない。
私は抵抗をするが、抗えば抗うほど締め付ける腕の強さが増していく。

「いい匂いだべ…。よくわかんねぇけど、オラァこっちの性格が好きだべ。」

「ちょっと…!いい加減にしなさいよ!初めてあった人に失礼だとは思わないの?!」

私は必死だった。
誰も助けが来ないこの危機的状況をどうやって乗りきれば…






「離さないべ。結婚するって言わない限り、絶対だべ。」








固唾を飲み込む音が、自分にも聞こえた。

ここは、テキトーでもいいから「YES」というべきなのか。
しかし、それでは後々困る。



「…考えておく。で、いいかしら?」



とりあえず、この方がいいだろう。
そうしたら時が来たときに断れる。


「まぁ、今日はそれでいいべ。」

陣はそういって出ていった。
やっと一人になって落ち着く。

“んもう、いい感じだったのに…。”

Dちゃんが悔しそうに言う。
今ワタシの中で抑えているから出ることはないけど。

「はぁ…。片付けたら、Cちゃんに変わってあげるけど、どうする?」

“…ううん。今日はもういいや。…明日でいいよ。”

「…そっか。」

私は新聞紙の上にガラスの破片をのせていく。







『…噴き出すマグマをミナモにつけて……』







私はガラスの破片を見ながら、あの悪夢を思い出す。


“…花子?どうしたんだ?”

Bちゃんが心配そうに聞く。

「うっ…ううん。…何でもない。」

私はガラスの破片をある程度集めると、掃除機をかけ、最後に窓を取り付ける業者に連絡をとって終了した。













翌日


昨日約束した通り、今日はCちゃんなのだが、なんだか元気がなかった。
元気が取り柄のCちゃんに、一体何があったのだろう。


「…私には…やっぱり……」

私には少し気がかりになった。

“大丈夫か?南野に告白しないのか?”

Eちゃんがそう言うと、元気のない返事をする。

「うん…。したいけど…でも、もういい。」

“なんで?すれば良いじゃない。後悔するわよ?”

珍しく、あのお色気満載のDちゃんもこの話に乗ってくる。
やっぱり、女の子なんだ。

「別に…もう、告白しなくても答えは見えてるから。」

“決めつけはよくないよ。ウチは恋愛未経験だから分からないけど、相手の答えが云々より、自分の気持ちを伝える事も大切だと思うよ。”

EちゃんがCちゃんに励ましの言葉を送る。
それに対し、主人格である私はさっきから男どもと一緒に黙ってばかりで口出しは一切しない。

「…そう、そうだよね。言わなきゃ分からないよね。…みんなの言う通り、南野くんに告白してみる!」

Cちゃんは元気が出たようで、いつものように制服を来て学校まで行った。









放課後


Cちゃん(私)の通う都立宇波高校の隣の隣の隣にある私立盟王学園。
盟王学園にはCちゃんの大好きな南野秀一がいる。

Cちゃんは、そんな大好きな南野秀一のいる盟王学園の校門の前で待ち続ける。

「なぁ、校門にクッソ可愛い女の子が立ってたぜ!」

「あの制服って、確か宇波だよな。」

「超可愛い〜!ナンパしようぜ〜!」

盟王学園内では既に私の事が話題に。
いつしか、私の高校に南野秀一が待っていたときのような状況になった。
それは、南野秀一の耳にもすぐに届いた。

「なぁ、南野。そこの校門に宇波の女の子がいるんだよ!女子に人気のお前さえいれば、引っかけられるだろ?」

「オレらと一緒にナンパしようぜ!」

「宇波…?」

私の通う高校の名前を聞いて南野秀一が反応する。


「…あぁ、それ、多分僕の知り合いですよ。」


南野秀一がそう言うと、周りにいた男子生徒が驚愕する。

女子生徒もその言葉で南野秀一の方に首を捻る。


「あっ…彼女…とかではないですけど、宇波に知り合いがいるので、多分彼女かなぁ…と。」

「名前は?!」

「住んでいるところは?!」

「好きな男のタイプは?!」

「3サイズは?!」

男子の熱い心意気に、南野秀一は押し潰されそうになっていた。
その頃、Cちゃんは校門の前で空を見ながらボーッと待つ。


「南野くん、今日は部活なのかな。それとも帰っちゃったかな。」
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