夢ヲ見テイタ

□Chapter. 2
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「おはようございます。」


「…おはよう。」

待っててくれていたらしく、気づけば南野秀一と一緒に学校まで登校するのが習慣になっていた。

「相変わらず素っ気ないですね。」

「なんでいつも私を待ってるの?先に行けば良いじゃない。」

「君と一緒に登校するのが楽しいからですよ。」


…私で楽しんでいるこの人は、一体何なんだろう。


「でも、アナタは私立。土曜日にも学校があるアナタと違って私は土曜日は休み。その日はどうしているわけ?」

「仕方ないので、一人で行きます。」


あ、そう。


「ただの隣人に、よくここまで付き合ってくれるわね。」

「冷たい人ですね。もう少し優しくしてくださいよ。」

「よく言うわね。自分が一番冷たいと思うわよ。」

私は彼の顔を一切見ずに話す。
それでも、彼は楽しいと言ってくれる。

「私と一緒に歩いて大丈夫なわけ?」

「別に恋人は居ませんから。わざわざ気にしてくれてるだなんて、心外ですね。」


「……勘違いしないでくれる?こっちにまで火の粉が飛んだら面倒になるでしょ。」


“ちょっと!感じ悪いよ、花子!”

Cちゃんが私にそう言うと、Bちゃんは笑った。

“良いじゃねぇか!やっちまえ!”


「…少し黙ってくれないか?」


「ん?何か言いましたか?」

私とワタシのなかで言い合うワタシたちに思わず反応してしまい、怪しまれてしまう。

「…いえ、関係無いわ。」

「そうですか。あ…」

南野秀一は何かを見て驚く。
私も南野秀一が見る方向を見ると、いかにも不良って感じの少年が現れた。


「あ?おー!蔵馬じゃねぇか!」


(蔵馬…?)

その時、若干南野秀一の表情が崩れた。

「やあ、幽助。」

幽助…?

知り合い?


「あ!なんだよ、朝っぱらから女と歩きやがって。」

「違いますよ、彼女はそんなんじゃなくて…」


“あっ!アイツ知ってる!ウチと一回やりあったことあるよ!”

Eちゃんはワタシの中で教えてくれた。

「ん?あ!お前!よく見たら、この前やり合った女じゃねぇか!」

「幽助を知ってたんですか?」


南野秀一が私に聞く。
でも、私には分からなくて、Eちゃんがのしあがって来ようとする。


「……知ってるよ。ウチもアンタのこと覚えてるよ。」


私からEちゃんに切り替わってしまった。

“おい!謹慎処分受けてるんじゃねぇのかよ?!”

Bちゃんがワタシの中で怒鳴る。

“仕方ないでしょ。こうでもしないと場が鎮まらないわ。”


「蔵馬!こんなヤツを女にするなら、他のヤツを選べ!」

「いや、一言もそんなこと…」

「そうだ。ウチらはただの隣人なんだよ。コイツがただ単に引っ付いてくるだけなんだよ。」

Eちゃんがにやにやしながら言う。


「…やろうってのか?」

「やりたければ仕掛ければ良いじゃん。」

「落ち着け、二人とも!せめて放課後にやってくれ!」

南野秀一がその場を抑える。

「しゃーねぇ。じゃあな、蔵馬!」

浦飯幽助はそういって学校に行ってしまった。
私は直ぐ様Eちゃんを沈める。


「なんか感じが変わりましたね、幽助と話していると。」


「…気のせいじゃない?私は私よ。」

さっきまでEちゃんだったことを黙る。
当たり前だけど。


「ホント、もうちょっと素直になってくれれば…」

「何か言った?」

「何でもないです。」


お互いに隠し合う。
特に親しいわけでもないので、ベラベラ話すわけにはいかない。

そんなことをしていると、あっという間に学校の近くまで来てしまった。

「じゃあ。」

「あ、あの…!」

南野秀一に引き留められ、振り返る。


「今日、放課後空いてますか?」

「…浦飯くんとのケンカがあるわ。」

「幽助はいちいち女性相手に本気にしませんよ。どうですか?僕と一緒に出掛けませんか?」


すると、ワタシの中でギャーギャーと騒ぎ始めた。

“きゃぁぁぁぁぁあ!デートだよ!デートだよ!!”

Cちゃんが一番うるさかった。

“行ってきなさいよ!ついでに誘うのよ♪”

Dちゃんが色っぽく言うが、私はどの言葉も無視した。

“ウチもいってきた方がいいと思うね。男に媚売っとけばいいことあるよ。”

Eちゃんがアドバイス程度に言う。

“オレは反対だぜ!こんな感じの悪いヤツと放課後までつるむなんてごめんだぜ!”

Bちゃんはみんなと違って一人だけ猛反発。
私は思わずため息がついた。


「……場所にもよる。」

「言ったら面白くないじゃないですか。」


私は考える。
少なからず、デートだとは思っていない。

隣人同士のお出かけごっこと思っている。


「わかった。じゃあ、盟王学園の校門で待ってるわ。」

「じゃあもし君が居なかったら、僕が宇波の校門で待ってますね。」


私はうんともすんとも言わないまま、すぐそこの学校まで歩いていく。
南野秀一もまた、宇波の隣にあるといってもいいほどの距離にある盟王学園の校門をくぐり抜ける。
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