夢ヲ見テイタ

□Chapter. 7
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『イヤアァアアァァァァアァアァァァアァアァアァッ!!』


オレが家に向かっていると、女性の悲鳴が響き渡る。
走って、悲鳴が聞こえた方にいくと、彼女の家の扉の前だった。

まさか…と、自分がどれだけ彼女に溺れているんだと、呆れてしまう。

彼女の隣にある自分の家に戻る。
早速、バッグから教科書やノートを取り出して机に向かう。

「秀一〜!お母さん、買い物に行ってくるから、その間にベランダの植物に水をあげてくれる?」

「わかりました!」

大きな声で返事をすると、母は出ていった。
オレはベランダにある植物に水を与える。

すると、みるみるうちに植物が空に向かって伸びていく。

「…あれで、いいんだ。断って、彼女の周りに行かないようにすれば…。」

確かに、Cちゃんと名乗る彼女を恋愛対象として見てはいない。



オレが好きなのは……










ドゴドガドスッ!!!







すると、隣から大きな音が聞こえた。
隣はちょうど彼女の…


「…分かってる。何があっても行ってはいけないんだ…。」


オレは部屋に戻って再び勉強に戻る。
宿題を終わらせ、一息つこうとキッチンに向かう。
コーヒーを注いでリビングのソファでゆっくりくつろぎながら飲んでいると、また悲鳴が聞こえた。


『あぁぁぁあぁぁぁぁぁあああぁぁああぁぁあぁッ……!!』


また大きな音がすると、音が止んだ。
さすがに気になって玄関の扉を開けると、彼女の家の前には近隣の人たちが集まって扉を叩いている。

「おい!どうしたんだ!開けろ!」

ドアノブをつかんで、ガチャガチャと動かす。
どうやら鍵がかかっているようで、外部からは進入出来ないようになっている。

しかし、オレは冷静に状況を判断して、家の周りを見ると、一ヶ所だけ窓の隙間から湯気が出ていた。
恐らく、浴室だろうと思った。

この際、彼女には悪いが入らせてもらう。

窓を開けて縁に飛び乗ると、湯気が視界を邪魔していたが、段々湯気が薄れて見えるようになった。


シャワーのノズルから出てくるお湯。


湯船に残る冷たい残り湯が、彼女の腕からでる鮮血によって温められる。


彼女は、制服を着たまま変わり果てた姿で項垂れていた。

オレは急いで彼女の腕を湯船から出して引き上げると、すでに虫の息だった。


「おい!しっかりしろ!!」


肩を叩くが、意識が無いのか無反応だった。
ケータイを取り出して、救急車を呼んでいる間、応急措置をするが間に合うかどうか…




「……み…な…みの……」




これは一体どっちの人格なんだ…?


「大丈夫ですか?今救急車が……」


「殺…して…殺してよ……」


彼女はそう言うと、涙を流した。

オレには理解が出来なかった。












「…C…ちゃんが……Cちゃんが…居なく……なっちゃった…」












・・・・・・・・・・・
Cちゃんが居なくなった…?


「それって、どういう…」


「これやったの…全部Cちゃんよ…。気が付いたら…Cちゃんは……死んじゃってた…。」


てことは、今の彼女の人格は一体誰なんだ?

「君の今の人格は…主人格ですか?」


「…他に、誰がいるのよ…。食い止めようとしたら…浴室が荒れちゃった…。たんこぶも…アザもできた…。…身体が……痛い…ッ!」


彼女はそう言うと、いきなり咳をして血を吐き出した。

よくみると、彼女の腹部には刺し傷があった。
おそらく腕で切った物と同じだろう。

「もうしゃべらなくていい!もうすぐで救急車が…!」

すると、玄関をドンドンと叩く音が聞こえた。

「救急隊です!開けてください!」

オレは直ぐに開けて浴室に向かう。
彼女は直ぐに担架に乗せられ、オレも一緒に同伴し、近くの病院に運ばれた。

「君、この子の知り合いかい?」

「いえ、隣の家に住んでいる者です。」

救急隊員が紙に何かを記入しながら質問する。

「血液型は?」

「…Oです。」

何を聞いているんだろう。
オレはどこも怪我していないし…。

「病院についたら、献血をしてくれないか?その子の血液型の輸血する血が無くて。前に手術した患者がその子と同じ血液型で、どうやら無いらしいんだ。だから、もし良かったら献血してほしい。」

そう言うことか。



「良いですよ。」
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