小説部屋─如月─
□無防備な君
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無防備な君
いつだってアイちゃんは輝いていて目を惹き付ける。
それは俺だけじゃなくて、クラスの同じ男子の憧れの的なんだ。
そんなアイちゃんとすっげー仲が良いことについ自慢したくなるんだけど、アイちゃんは基本誰にでも優しいから、時々心配になるんだ。
誰にでも優しくて、誰からでも好かれるそんなアイちゃん。
他の男子から告白されてるのを見たことも何度もあったりしてさ。
いつか、俺じゃない他の誰かを選ぶんじゃないかって、いつだってドキドキしてる。
でも、この間、アイちゃんがヤキモチ妬いてくれたんだ。
校門の前で待ち合わせしていて、急に俺に背を向けて走り出したアイちゃんになんで?って思いながら追いかけたんだ。
アイちゃんの細い腕を掴んでこちらを向かせれば、溢れんばかりの涙を溜めた瞳。
「ゴメンなさい」
って言われたけどなんで謝られるのかが全然わからなくて。
謝って欲しい訳じゃなくて、どうして逃げたのかって聞くとアイちゃんは、嫌な自分を見られたくなかったからって涙をこぼしたんだ。
ただでさえアイちゃんの全てが愛おしいのにそんな風にアイちゃんがヤキモチを妬いてくれてるなんて思ったら、不謹慎だけど、嬉しくて。
腰を引き寄せて強く抱きしめたんだ。
クラスの女子にちょっとお礼を言われただけだって話してさ。そう言うと安心したのかアイちゃんは俺の胸に顔をを埋めてしばらくそうしてた。
「アイちゃん。馬鹿だなぁ。そんな心配しなくていいのに。俺はいつだってアイちゃん一筋なのにさ」
そう言うと、意外というかなんというか。
「だってガンちゃん、モテるから」
俺が?ナイナイ。
皆、俺がアイちゃん一筋だって事知ってるし。アイちゃん、以上に誰かを好きになる事なんてないと思う。
「俺は、アイちゃんが居てくれればそれだけで幸せなんだけどなぁ〜」
そう言って胸の中のアイちゃんの顔を覗き込むと少しびっくりした様な顔をして、そして、それからしばらくして俺が好きな笑顔を俺に向けてくれたんだ。
アイちゃんは俺がモテるからっていうけれど、アイちゃんの方がずっと誰かに想いを寄せられてる。
アイちゃん以上に俺の方が焦ってるのに気付いてくれてないんだよなぁ。
でも、アイちゃんが俺の事を誰よりも想ってくれてるように俺もアイちゃんの事を想ってるんだ。
「俺はアイちゃんが大好きだよ。もっと自信を持ってよ」
俺の誰よりも大切で愛しい人。