小説部屋─如月─
□ヤキモチ
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頭が良くて、運動神経もいい。
そして、誰に対しても優しくて、男女関係なく人気があるガンちゃん。
いつも皆に囲まれて笑顔を振りまくあの人を見てとても眩しい。
でもねでも、考えたくないけれど、他の人にそんなに優しく笑いかけないでって思ってしまう。
相手が女の子なら尚更の事で。
こんな思いを抱いている自分が嫌。
こんな嫌な自分をガンちゃんに知られたくない。
だけど、学校が終わって帰ろうとする中、校門前で待ち合わせしていたガンちゃんが、同じ学校の女子と楽しそうに話しているのを見て、いてもたってもいられなくて、思わず、二人から背を向けて走り出したの。
でも、走り出した瞬間にガンちゃんが私に気が付いたの。
「あっ、アイちゃん!ゴメン。それじゃあ!」って。
お願い追ってこないで。こんな嫌な私を見ないで。って思ったけれど、男の子の本気の走りに敵うはずもなく、腕を取られて。
「アイちゃん!なんで逃げるんだよ」
私は俯いたまま
「ゴメンなさい」
そんな私を自分の方に向き合わせてガンちゃんは言ったの
「アイちゃんに謝ってもらいたいんじゃないよ。どうして逃るの」
私はガンちゃんを見ようとするけれど目を怖くて見れなくて、涙が溢れた。
「嫌な私を見られたくなかったの」
ガンちゃんはそのまま何も言わずに固まっていて。
私が覚悟を決めてガンちゃんを見るとガンちゃんは横を向いてた。その耳は赤くて…
「妬いてくれてたんだ」
ってポツリ。
「えっ、この間クラスの女子が数学が当たるからどうしようって困ってたから教えてあげたら、帰り会ってさ。お礼を言われてたんだ」
「あっ…」
そういえばガンちゃんのクラスでそう言えば見かけてた…
ガンちゃんは私と向きあって
「だから彼女とは何にもないから」
ガンちゃんはそう言って照れた笑みを見せる。
私はそんな事も気付かず妬いて穴があったら入りたい程恥ずかしくて。でも、
「アイちゃんが妬いてくれて嬉しかったよ。俺、愛されてるんだなぁって」
そう言って私をしっかり抱きしめてきた。
デレたガンちゃんが機嫌が良くって涙が溜まってた瞳から一気に涙が消えてしまった。
ガンちゃんたら焼いてくれるのが嬉しいだなんて。ガンちゃんには叶わないなぁ。
私はガンちゃんに身体を預けてその大きな胸に顔を埋めた。
ガンちゃんにこんなにも想われてる。それが嬉しくて、抱きしめられている温かみを感じながら。