小説部屋─如月─
□おててつないで
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おててつないで
今日はアイちゃんと一緒にヤッターメカの部品を買いに市内にでた。
なんていうか、今日は何かイベントがあるのか、街中は人・人・人であふれかえっていた。
俺は人ごみに逆らいながらもなんとか歩を進める事ができたけど、後を振り返って見ると、アイちゃんは人ごみに流されそうになっている。
むしろ押しつぶされそうな勢いで。
そんなアイちゃんをみて、急いで俺はアイちゃんに手を伸ばした。
そして、アイちゃんの手首をつかむと自分の方へと引き寄せた。
「アイちゃん、大丈夫か?まさか、こんなに人が多いなんてな」
アイちゃんは俺に置いて行かれる心配がなくなったからからか、少しホッとした表情を見せた。
「ありがとう、ガンちゃん。あのまま、引き離されちゃったらどうしようっておもちゃった」
アイちゃんの困ったような苦笑。そして大きく一息ついた。
そして上目づかいに俺を見て「いきましょうか?」っていうんだ。
俺の為についてきてくれてるのに、こんな目に合わせるのは気が引けて、俺はアイちゃんに言ったんだ。
「今日はすっごい人だから別の日に来た方がいいんじゃない?」
そしたらアイちゃんは、
「折角ここまで来たんだから、買いにいきましょ。ヤッターメカたちも待ってる事だし」
そういって俺に笑いかけた。
でも、本当にすごい人の波ではぐれたら見つけるのは困難そうだ。
だったら。
俺はアイちゃんの手を握りしめた。
「俺の手を離したらだめだよ」
その言葉にアイちゃんはなかば顔を赤らめながら、頷いた。
なんて言うかさぁ、こんな仕草さえもアイちゃんは可愛いんだよな。人が多くて飽き飽きするけど、こういう時、役得だなって都合のいいことを思ってしまう。
「じゃあ、行きますか」
俺がアイちゃんにそういって笑いかけると、アイちゃんも同じく笑顔で俺にかえしてくれた。
めんどくさがりの俺だけど、君の為なら、なんだってできる。
だから、決してその手を離さないでいて。