小説部屋─如月─
□お部屋訪問
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今日は、アイちゃん宅にお邪魔する事になったんだ。
いつもガンちゃんの家ばっかり行って申し訳ないっておじさん、おばさんが気にしてさ。たまにはこっちに来てご飯でもどう?という事でおよばれされる事になった。
アイちゃんもそうだけどさ、おばさんも料理が上手いんだよなぁ。
俺の家はほとんど出来合いのお惣菜とかが多くてさ、ほとんど手作りってないんだよなぁ。
それに比べてアイちゃん家は全て手作りでさ、ほっぺが落ちそうなほど美味しいんだよ。
前にそれを言ったらおばさん本当に喜んでくれてさ、そんな美味しそうに食べてくれると作り甲斐があるわって、沢山作ってくれたんだ。
アイちゃんが俺の家に来る時もお惣菜を持ってきてくれる事が多い。
そして、アイちゃんが食べるまでのセッティングをしてくれるんだ。
本当に頭が下がります。
「こんにちは〜」
家の前で声をかけると、おじさんが、
「おぅ、ガンちゃん。早く、うちの中に入んな」
と言ってくれる。
おばさんは、まだ、食事には早い時間だからと言って、アイちゃんの部屋でお喋りしてきたらって言うんだ。
毎回、思うんだけど、女の子の部屋に入るって緊張しないか?いいのか?
入って??
「あっ、ガンちゃん。いらっしゃい」
アイちゃんは家の中だからか、何時もの繋ぎではなくもっとラフな格好をしている。
肌触りの良さそうなパーカーに、同じ生地で作られている短パン。
これがまた、可愛いんだ。
「あのさ、おばさんがまだご飯ができるまで時間があるから、アイちゃんの部屋で雑談でもしてきたらって…」
それを聞くとアイちゃんは目を丸くしてコロコロと笑って言った
「もう、お母さんたら。ガンちゃんが来るとご飯をすっごく美味しそうに食べてくれるから気合いが入ってるのね。じゃあ、できるまで、私の部屋にいましょ」
アイちゃんは俺を部屋に招き入れた。
アイちゃんの部屋はそれはもうきっちり片付けられていて綺麗だ。
無駄なものなんて何もないというぐらいに。
真ん中にテーブルがあって、その前にはTV。がべ際にはコンポや本棚がある。
そしてその反対のがべ際にはベッドが置かれている。色も統一されていて、薄いピンク色で全体的にまとめられている。
それがまた、アイちゃんらしいんだ。
アイちゃんは自分の部屋に案内すると、すきな所に座っててと言って、コーヒーでも入れてくるねと言って部屋を出て行った。
ちょっとといえどもなんだか凄く落ち着かない。
そう思ってるとアイちゃんがマグカップにコーヒーを入れて戻ってきた。
「ガンちゃん。座っててくれててもいいのに」と笑っていう。
俺もアイちゃんが戻ってきた事でホッとしてなんだか落ち着いてきた。
「おばさん、今日の何作ってくれてるんだろう?」
「なぁに、食べる前から気になるの?」
アイちゃんはクスクス笑って俺を見た。
「だってさ、おばさんやアイちゃんが作るものってすっごい美味しんだって!」
アイちゃんは相変わらず笑ってて、
「ありがとう」
っていう。本当にそう思ってるんだけどなぁ。
そんな、たわいのない話をしているうちにおばさんから声がかかった。
どうやら出来上がったみたいだ。俺とアイちゃんは立ち上がって部屋を出た。
アイちゃんはまっすぐキッチンへ向かっていく。俺は、行く前にチラッとだけアイちゃんの部屋をもう一度見た。
綺麗に片付けられた部屋のコンポの上に飾られた写真立て。
そこに写ってるのは、アイちゃんと俺が写った写真が目に入った。
それを目の端に留めながら部屋のドアを閉めてアイちゃんの後を追うようにキッチンへ向かった。
俺の想いも、アイちゃんの想いも同じであればいいと心から思いながら。